石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

小説『ヤングガン・カルナバル 後夜祭・ラストマンスタンディング』(深見真、徳間書店)感想

ヤングガン・カルナバル 後夜祭・ラストマンスタンディング (トクマ・ノベルズEdge)

ヤングガン・カルナバル 後夜祭・ラストマンスタンディング (トクマ・ノベルズEdge)

死体の山です。

いやー激しい。前回も思わぬ人が思わぬことになってましたが、本作でもまさかと思う人がとんでもないことになってますよ。ドンパチも格闘も熱いし、死体の数もうなぎ昇り。ちなみに前作のラストであたしがのたうち回った伏線は今回は回収されず、「伏線が複数の巻をまたぐ」というYGCらしい展開を見せています。

ドンパチと格闘

非常に面白いと思ったのは、リアリズム「だけ」に徹した描写じゃないことですね。毒島の銃の仕掛けとか、あの人のあの装備とか、まだ公式には実用化されていないあの兵器とかのギミックが楽しすぎます。よくマンガ的だと評されるYGCですが、今回もそのノリがいい意味で大爆発だと言えましょう。逆に言うと、ガッチガチに現実的な描写ばかりでないと納得しないタイプの人からは異論の出そうな部分があるということですが、YGCにはあまりそういうファンはいなさそうなので無問題かと。

格闘についても同じことが言えます。たとえば琴刃VS聖火とか、聖火VS弓華のシークエンスなんかがそうですね。あれだけ無敵と思われた琴刃に簡単に一撃を加え、

「この程度の作戦なら、私の娘でも思いつくぞ」

と言い放つ(p93)聖火の理不尽なまでの強さがすげー楽しいです。ちなみに聖火は弓華相手にも圧倒的な強さを見せており、「この人と『アフリカン・ゲーム・カートリッジズ』の小島警視を戦わせたらどっちが勝つんだろう。いや、そんなことをしたらあまりの激戦で地球がぶっ壊れそうだから、レイ・シュンライが止めに来るかも」と思ってしまいました。

さらに、これだけ強いキャラを出しつつ、決して安っぽい少年漫画にありがちな「強さのインフレ」的展開に陥らないところもユニーク。たとえば聖火VS弓華戦では、弓華が一方的にボコボコにされつつも聖火に向かって言い放つ台詞が痛烈なカウンターになっており、聖火の意外な弱さが浮き彫りにされてるんですよね。「息子が父を超える」ことをテーマにしたエンタテインメント作品はたくさんありますが、「娘が母を超える」(しかも鉄拳を交えながら)話ってレアだと思うので、今後弓華がどのようにして母を超えていくのか楽しみです。でもなんか、溶鉱炉にでも落っことさない限り死にそうもない母で、弓華も大変ですけど。

死体の数うなぎ昇り

「まさかこの人が」と思うようなキャラがどんどん死んでいくので、最後までまったく気が抜けませんでした。最終ページにたどりついてこんなにほっとしたヤングガンは他にないかも。

伏線は持ち越しに

今回、日本居残り組の動向には大きな変化はなく、「バンケットの死闘」ラストの伏線はまだ回収されていません。というか、カルナバルの戦闘が激しすぎて、それどころじゃありません。というわけで、レズビアン要素についてはあまり目立った動きはないです。弓華が帰国してからですな、やっぱり。