- 作者: 松本真,ネツマイカ
- 出版社/メーカー: ジャイブ
- 発売日: 2008/07
- メディア: コミック
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百合っぽさが完全復活
「羽乃」(うの)と「優奈」(ゆうな)のふたりの少女がキスで合体するシリアス変身ヒロインもの。1巻後半が男性キャラ視点の「男が女にドキドキ興奮しまくる話」と化してしまっていたのが、この2巻ではお話の主導権がふたたび主役の少女たちに戻り、百合っぽさが完全復活しています。いやー、よかったよかった。特に優奈が羽乃に対して見せる感情の機微がすばらしかったです。他にも、サブタイトルの含みやカプレカ様の素顔、そして新たな謎など、注目すべき要素がてんこもりで、実に楽しい1冊でした。今後の展開も楽しみです。
優奈から羽乃への感情
今回、ARCAの研究所で最初にキスを命じられたときの回想シーンが出てきます。このとき、羽乃の反応(p73)は
だったのに対し、優奈は軽く頬を染めながらえーっっイヤだよ! 女同士でキスなんて!
と言ってる(p74)んですね。孤独だった優奈には「わたしと同じ境遇なのに明るく笑う」(p72)羽乃がまぶしくて、出会った瞬間から惹かれていたわけです。普段おとなしく見える優奈が、今でも羽乃のことになると……羽乃ちゃんとなら別に
と凄味のある覚悟(p90)を見せているのは、そのため。そのあたりに説得力があって、すごくよかったです。なお、それ以外でも、寒い部屋で羽乃と布団にくるまって暖をとるコミカルなシークエンスや、電車で羽乃の肩に頭をあずけて安心しているところなど、ちょっとした場面場面での優奈の表情にしっかりと好き感情があふれていて、ぐっときました。羽乃ちゃんが死ぬならわたしも死ぬ
その他面白かったところ
数字が暗示するもの
各話のサブタイトルが常に数字がらみであるところが面白いですね。例を挙げると「寒空、2人きり」「1+1=1…?」「一路、北へ」など。考えてみれば、ヒロイン2人の名前も「uno」「una」(ともにスペイン語で『1』)からきてるんじゃないかと思います。「合体したまま戻れなくなるのは嫌」「ふたりで一緒にいたい」という羽乃と優奈の気持ちを追いかけていくお話であるだけに、こんなところにも「数」へのこだわりが込めてあるんじゃないかなと思いました。
カプレカ様の意外な素顔
1巻では単なる無敵の女神っぽかったカプレカ様ですが、今回はなんだか人間的な側面も見せています。こうなってくるとカプレカ様も応援したくなってくるし、かと言ってヒロインたちの「変身せずにふたりでいたい」という願いもかなってほしいしで、読者としては嬉しい板挟み状態でした。
新たな謎
山田(仮)の別名が明かされるのですが、実はそれはカプレカの別名ともつながりがあるらしいところが非常に興味をそそります。それらの別名が巻末に登場する謎めいた少女キャラとの関連があるのかどうかも気になるところ。このように謎を少しずつ小出しにして読者をひきつけるテクニックには、「うまいなあ」とうならされました。
まとめ
1巻でただの萌え系学園ものになりかけたと思わせておいて、一転してミステリアスかつ緊迫感あふれる百合ものに軌道修正してきた感じ。こういう路線であれば、ハジメの今後の活躍にも素直に期待できそう。というわけで、すごくよかったです!