- 作者: 桜庭一樹,タカハシマコ
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2009/01/08
- メディア: コミック
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お嬢様学校の異端者たちが綴る学園史
というカバー裏の文言そのままの、つまり、原作である桜庭一樹氏の小説『青年のための読書クラブ』をかなり忠実にコミカライズした微百合漫画です。原作のままのところも、新たに付け加えられた部分も、どちらも漫画ならではの臨場感や説得力があってよかったです。タカハシマコさんらしい美しさと毒も健在で、たのしく読みました。ちなみにこの1巻には、原作の第1章と第3章にあたる「烏丸紅子恋愛事件」と「奇妙な旅人」が収録されています。伝統あるお嬢様学校・聖マリアナ学園。校内の異端者だけが集う『読書クラブ』には、長きにわたって語り継がれる秘密の“クラブ誌”があった。そこには学園史上から抹殺された数々の事件が、名もない女生徒たちによって脈々と記録され続けていた――
臨場感と説得力、そしてタカハシマコらしさ
やっぱり画像の力っていうのはすごいもので、アザミの孤独とか、金田美智子のうさんくささとか、乙女たちの残酷さとかが読み手の胸にぐんぐん迫ってきます。中でもすごいなと思ったのは、「…蕾をやる」のシークエンスの毒気とエロス、そして第1章クライマックスのブラックなコワさ。どちらも原作で既読の場面のはずなのに、ゾクゾクさせられました。美しい絵柄でこうした鮮烈なスリルを紡ぎだしていくところが、タカハシマコさんの真骨頂だと思います。
漫画版オリジナルの部分もよかったです。たとえば、「奇妙な旅人」の、髪を下ろし卒業していくきよ子と時雨の会話とか。あのキュートな百合っぽさ、好きです。<桃色扇子>の泣きぼくろなんてのもいい味出してました。
百合か微百合かと問われたら
やっぱりこれは微百合な話だと思います。美少女を王子と見立ててキャーキャー騒ぐ「仮性エス」の少女たちはもちろんガチなキャラも登場し、さらに女のコ同士の肉体関係までも示唆されるお話ではありますが、同性愛そのものはストーリーの本筋じゃないと思うんですね。
この作品はあくまで、したたかな「乙女なるもの」への共感と賛辞を描くものであって、同性愛(傾向)は単にそこに内包されている要素のひとつなんじゃないかという気がします。なので、ベタベタあまあまな萌え系百合展開とかをお探しの方には向きません。そこだけご注意を。
まとめ
原作に忠実な内容に、タカハシマコ流の毒と美をつけくわえて料理してみせた、非常に面白い一品でした。小説版を既読の方にも未読の方にもおすすめです。