バタフライ キス (角川コミックス ドラゴンJr. 141-1)
- 作者: 東雲太郎
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2009/03/09
- メディア: コミック
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打ち切り感漂う百合アクション。絵もお話も今ひとつ。
キスで強力な科学技術「式」を操れる少女「桜子」の力をめぐり、桜子のパートナーの「ほむら」(♀)や、桜子に懸想する「静」(♀)が戦いに巻き込まれていくという百合バトルアクション。「東雲太郎の幻の一般誌デビュー作」(帯より)とのことですが、正直、今ひとつでした。理由は、絵の細部に微妙に投げやり感が漂うこと、「女同士なのに」とレズビアニズムをタブー視する部分が複数あること、そして打ち切り感漂う強引なオチ、の3点です。
絵の微妙な投げやり感
背景がだんだん白くなっていくところがなんともかんとも。あと、アップはともかくロングショットの絵が大雑把すぎるような印象を受けました。それも個性のうちだと言われればそれまでですが、ならばせめて「士郎正宗の模倣をして挫折しました」風の絵柄や間の取り方はやめた方がいいのではないかとも思います。シロマサ風を気取るなら、あの緻密な書き込みまで再現してナンボでしょう。
レズビアニズムのタブー視
主人公のほむらからしてまず、桜子の自分に対する想いについて
とか呟いているところ(p. 68)がまずマイナス。そのあと自分の想いを自覚して「あたしも桜子が好き」と告げる場面(p. 77)があることはあるのですが、なんとそれに対する桜子の返事まで桜子……本気なのかな…
女同士なのに…
であるところ(p. 78)にがっくり。いくら音符やハートマークをつけるにしたって、百合作品でここまで無邪気にレズボフォビア(レズビアン嫌悪症)表明せんでも。やだ♪ 女同士なのにっ♥
設定が設定だけにキスシーンは多いし、とってつけたような「スパゲティの口うつし食べ」「ベッドでいちゃこら(※セックスに非ず)」なんていうシークエンスもあるんですけどね。でも、根っこのところでレズビアニズムを下に見る話である以上、これらの場面の萌え度も半減。残念です。
強引なオチ
以下、最終話に関して。
- 松子と鈴子の行動(pp. 166 - 168)がわけわからん。
- あれだと殴ってまであの人を止めた意味が全然ないと思うんですが。
- 本来ならあの間にもう少しドラマがあった、とかそういうことなんでしょうか。
- ほむらの活躍が結局描かれない。
- アクション物なのに、クライマックスのアクションを完全にすっ飛ばして終わりっていうのはどうなのよ。
- そう言えば必殺技はどこ行った?
- 取ってつけたような結末。
- 説明不足のまま絵に描いたような「俺たちの冒険はこれからだ!」パターンになだれ込むという展開に、涙を禁じ得ません。
やっぱり打ち切りだったんでしょうか。あまりにも尻切れトンボに終わってしまうので、ストーリーの盛り上がりを求めて読むには不向きなお話だと思います。
まとめ
百合物としても、バトルアクション物としても今ひとつな作品でした。残念です。