石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『魔法使いしかっ!!』(うおなてれぴん、幻冬舎コミックス)感想

魔法使いしかっ!! (バーズコミックス)

魔法使いしかっ!! (バーズコミックス)

「キス満載・裸も程々」なライト百合コメディ

偶然のいたずらで魔法使いになってしまった主人公「みう」が、魔力の源「フォーチュンスター」のカケラをめぐってさまざまな魔女っ子たちと戦うアクションコメディです。相手が持っているカケラはキスで奪えるという設定のため、ほとんど毎回女のコ同士のキスシーン(これがまたエロ可愛くて綺麗なんですよ)が登場するのがミソ。恋愛色こそ非常に薄いものの、女のコ同士のキス絵がお好きな方なら、これだけでもうごはんが三杯いけるかと。ちなみにコメディとしても面白く、ベタなネタを多用しつつそれを軽やかにメタ視してみせるという笑いの取り方が楽しかったです。

とにかくキス絵がたくさん登場

そこだけ見たらどんなラブラブエロエロ百合漫画かと勘違いしそうなキス絵がふんだんに出てくる作品です。ほとんどの場合、目的は「フォーチュンスターのカケラを奪うこと」であって恋愛感情や欲情は絡まないのですが、だとしてもあの柔らかそうでかつ甘そうなキス絵の氾濫には圧倒されまくりました。こんなゼータクしちゃっていいんですか、みたいな。
ちなみに成年向け雑誌(『コミックメガストア』)掲載作品だけあって裸も多めですが、セックスは登場しません。あくまであっけらかんとしたお色気を楽しむための作品だと思います。

恋愛要素は薄いんですが

ひと組だけ本気のキスをしてる♀♀カップルがいることはいます。ただしあくまで脇キャラですし、お話の本筋にはかかわってこないので、あんまり期待しすぎない方が吉かと。恋愛よりも「キスと裸とギャグ」がメインのお話だと思っておいた方がいいです。

ベタさをひとひねりした面白さ

ここがほんとに面白かったです。魔女っ子たちのコスチュームや決めポーズなどはかなりベッタベタなアニメっぽさを意識していると思うんですが、同時にあえてそのベタさを脱臼させて脱力系の笑いを生み出す、というメタな面白みにあふれた作品なんですよ。

メタな笑いの例1
変身シーンで「魔法の美少女マジカルみうみうーっ!!」と叫んでポーズを決めてから、仲間と「「みうみう」って何?」「だって「みう」だけだとなんか物足りないかと思って」「あ じゃあ地名とかつける? 横浜みうみうとか」「それ結構スレスレよ」という会話を展開(p. 115)。
メタな笑いの例2
猫耳猫しっぽで肉球手袋をはめて「〜ニャ」と喋る敵キャラに、「これだけキャラがクドいのに語尾が「ニャ」っていうのはオリジナリティ薄いわね」ときわめて冷静にツッコむ(p. 51)。
一事が万事で、全体にわたる「ベタなネタを愛しつつ、単にテンプレをなぞる『だけ』では終わらない」というひねりの効きかげんがとても楽しかったです。そもそも魔女っ子ものでありながらなぜかドイツの擲弾兵コスチュームが出てくるとか、どう見ても特撮系のネタが混じっているとかいうあたりが完全にテンプレを逸脱していて、そのへんのごった煮感もすごく面白かったんですけどね。

まとめ

ライトな百合コメディとして素晴らしい作品でした。おいしそうなキス絵の数々も、軽やかなひねりのきいたギャグも、とても楽しかったです。ガチな恋愛ストーリーを求める方には向きませんが、あっけらかんとしたちょい百合コメディをお探しの方にはすごくおすすめ。