石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『わたしの大切なともだち(1)』(袴田めら、双葉社)感想

わたしの大切なともだち 1 (アクションコミックス)

わたしの大切なともだち 1 (アクションコミックス)

ちょっぴり苦い友情ストーリー

すれ違いが続いていた幼なじみの少女「田中橘」が記憶喪失になったのを機に、「私達親友だったんだよっ!!」と思わず嘘をついてしまった「海老沢笙子」(エビちゃん)の物語。恋愛要素はほとんどなく、百合というより99パーセント友情ものであるとあたしは受け取りましたが、とても楽しく読めました。コミカルな空気の中に漂う苦みとペーソスがとてもいいです。

エビちゃんと橘の関係性がどうなっていくかだけでもハラハラさせられるのに、ちょっとSFテイストな伏線や、「表現する」というのはどういうことかという視点がさらにお話の厚みを増しています。同じ(微)百合物でも先日レビューした『まんがの作り方(1)』(平尾アウリ、徳間書店)では「まんが」がサブテーマになっているのに対し、本作では舞台がデザイン専門学校ということもあり、商業デザイン全般が話題になっていて、その違いがまた面白かったです。

再び友情方面に話を戻すと、エビちゃんと橘以外に、メガネキャラの寒河江(さがえ)さんとエビちゃん、という組み合わせもいい味出してます。1巻にはまだ収録されていませんが、ありがちなツンデレキャラとはまた違う意地の張り方(第7話)が可愛いんですよ、寒河江さん。頭ん中お花畑な乙女たちがファンタジックにいちゃいちゃとじゃれ合うだけの「友情」ストーリーではなく、もう少し現実寄りの、痛みもみっともなさも含めた友愛をあったかく描き出すお話だと思います。

まとめ

恋愛系の百合話ではまったくないのですが、女のコ同士の友情を苦みや痛みも含めて優しく描いていくところがとてもよかったです。また橘の様変わりの理由を少しだけ明かしてみせる伏線や、デザイン関係の話題なども楽しく読めました。2巻も楽しみです。