石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『リスランタンプティフルール』(さかもと麻乃、芳文社)感想

リスランタンプティフルール(まんがタイムKRコミックス エールシリーズ)

リスランタンプティフルール(まんがタイムKRコミックス エールシリーズ)

マリみて劣化コピーに「花」というモチーフを持ち込んだだけ。特に新味なし。

お嬢様学校を舞台とする微百合話なんですが、特に新味はないような。「タイが曲がっていてよ」の代わりに冒頭のハンカチのシークエンスを入れ、山百合会の代わりにリスガーデン(中庭の花園)を、薔薇様やそのつぼみたちの代わりに「リスランタンプティフルール」(お花の世話係)という役職を設定しただけじゃないですか、これ。おまけにキャラ立てが弱く、どのキャラも顔の見分けこそついても、中身の見分けがあんまりつかない感じ。

独特の個性的な絵柄は魅力的だと思います。また、手つなぎのシーンや

あなたの顔が好き

の場面(p. 88)、そして

私に出会えなくても良かったという事だわ…!

の場面(p. 102)などに漂う百合っぽさも悪くはないです。けれども物語のバックグラウンドがどこかで見たようなものばかり、キャラの個性も希薄、ストーリー的にもたいして大きなうねりはなし、とあっては、全体的な印象は非常に薄口であると言わざるを得ません。同じ絵柄で、もう少しオリジナリティあふれる作品が読めたら、もっとよかったのにと思います。

まとめ

ひょっとしたらこれは、「お嬢様学校」「全生徒憧れの役割になぜか選ばれる主人公」「お花を愛でる乙女たち」「淡い思慕」などの設定だけで既にストライクゾーンど真ん中な方には、とてもよい作品なのかもしれません。けれども、目新しい設定や意表をつくストーリー、個性豊かなキャラクタなどが見たい方にはまったく向かない漫画だと思います。読み手によってかなり評価が分かれる1冊でしょうね。