石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『ゴクジョッ。〜極楽院女子高寮物語〜(2)』(宮崎摩耶、集英社)感想

ゴクジョッ。 2 〜極楽院女子高寮物語〜 (愛蔵版コミックス)

ゴクジョッ。 2 〜極楽院女子高寮物語〜 (愛蔵版コミックス)

純情乙女のハイテンションお下品コメディ(百合あり)

女子高とその寮を舞台としたお下劣コメディの第2巻。相変わらず下半身露出しまくり(主に主人公の亜矢が)で、飛ばしすぎの皆さんですが、ポイントは実は亜矢が純情そのものな処女だってところでしょうか。こんなにおバカで下品でエロエロなのに、その実体は背伸びがしたい乙女でしかないというギャップがとても面白かったです。ちなみに亜矢以外も全員キャラ立ちまくりで、楽しく読みました。数々の百合ネタも、「エロスと身も蓋もないアホさの夢の共演」といった具合で、よかったです。

今回も飛ばしすぎの皆さん

以下、巻頭のキャラ紹介から抜粋。あ、ちなみに全員女性キャラです。

赤羽亜矢
IQ0以下のバカ女。
土呂小夏
何をされても亜矢が大好き。
大和田円
亜矢で白飯3杯はイケる。
栗橋南
電動ハブラシしか友達がいない。
宇都宮飛鳥
オナニーのおかずはもっぱら亜矢。
尾久要
魔王である。

このような皆さまが乳もパンツも股間も全開でめくるめくエロギャグをかましまくる漫画、それが『ゴクジョッ。』です。全年齢向け作品なので、さすがに局所はお花の絵柄の自主規制マークで隠されていますが、そのマークがこの1冊だけで30回近く出てくると言えば、この漫画の暴走っぷりが伝わるでしょうか。

特筆すべきは、性的なギャグのことごとくが、とことんお下劣でありつつも終始カラリとしていること。絵そのものはお色気マンガの文法で描かれて(乳揺れや肉感的な股間描写に顕著です)いるのに、内容にはいらんあざとさは皆無なんです。「おバカな女たちの、スカッと笑えるエロギャグ漫画」ととらえておけば、まず間違いないかと。

亜矢について

相変わらず傍若無人な下品さをふりまいている亜矢ですが、面白いのは、彼女が実はオトナぶりたいだけのいち処女でしかないということ。あんなにもパンツを脱ぎまくり、友人のパンツも下ろしまくり、口を開けば裏スジだのヌレヌレだのと叫んでいつつも、実はこの人、

  • 男の裏スジは2本あると信じている(ていうか男のそれ自体見たことがない)
  • 「ヌレヌレ」の意味がわかっていない(ていうかたぶんオナニーの仕方もわかってない)

という純真少女だったりもするんですよね。この行動と内面とのむちゃくちゃなギャップが、『ゴクジョッ。』の最大の面白さだと思います。言うなればこの漫画って、「背伸びがしたい乙女に無敵のバカさとすさまじい行動力があったらどうなるか」とう壮大な思考実験なんじゃないでしょうか。こんなにもバカとエロを詰め込んだコメディでありつつ、同時に「乙女」を描く作品でもあるという斬新さが大好きです。

百合方面について

女のコ同士で偶然重なった手と手のやわらかさにドキドキし、

「お前…手…やわらかいのな」
「え!? アンタこそ…やわらかい手じゃない…!!」
「おい…手ェはなせよ…」
「アンタこそはなしなさいよ」
「じゃないと…もっと体 近づけちまうぞ!?」
「フン! それはあたしのセリフよ…」

と絡み合ってみたり、風邪の看病シチュエーションで

「ココが…ココが気持ちいいんですか?」
(引用者中略)
「きっ…気持ちイイけど…何か…何かヘンッ…ッ!」
「顔赤いですね そろそろ座薬入れましょうか…」

なんて展開を見せてみたりと、1巻よりさらに百合エロ豊富になってます。しかも、体だけ適当に絡ませて終わりではなく、キャラクタの欲望や性的興奮がきちんと描かれているところがポイント。それでいて絶対にギャグも忘れないところがまたよかったです。

その他いろいろ

  • 「魔王」こと尾久先生と「栃木の処刑姫(しにがみ)」こと赤羽沙矢とが織りなすヤンキーネタもエクセレントでした。中扉からおまけ漫画まで、まんべんなく笑わせてもらいました。
  • 中学時代の亜矢があまりにも可憐なところも楽しかったです。

まとめ

つきぬけた下品ギャグの破壊力はそのままに、百合百合しさを1巻よりさらにパワーアップさせた1冊だと思います。笑いの中にも女のコから女のコへの性的欲望がちゃんと存在するところが、特によかった。また、こんなにもおバカなエロスを追求した作品でありつつ、実は「背伸びがしたくてジタバタする乙女」を描く漫画でもあるという二重構造が楽しかったです。3巻も、とても楽しみ。