- 作者: 尚村透
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2010/05/22
- メディア: コミック
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尻上がりに面白みを増す百合アクション。ただし一部にあざとさあり
学園百合アクションの第3巻。ある意味ツンデレな新キャラ・レイコをメインヒロインとして、エクザクランの目的が少しずつ明かされていくという内容です。前巻よりさらにオリジナル要素が増している点や、女性キャラたちの強さと連帯が強調されている点が興味深かったです。キャラたちの表情もよく、1巻より2巻、2巻より3巻と、尻上がりに面白みを増している作品だと思います。ただし、性的な意味であざとい演出が多いところは興ざめ。一部の層にとってはあれはサービスなのでしょうが、チュパ音出したり肌色多めにしたりしとけばエロいってもんでもないと思うんですよあたしは。
キャラクタの表情について
特にレイコとツキがよかったです。まずレイコは、行動こそ類型的ではありますが、キメ場面(複数)での表情や台詞が息をのむほどあざやかなんですよ。今後も出てくるんでしょうかこの人。出てきてほしいなあ。また、ツキについては、ソラに対して見せるやわらかい表情が百合百合しくてステキでした。
オリジナル要素が増加
エグザクランの目的がうっすらと明かされ始め、それと共にオリジナル要素も強くなっています。1巻の時点では『少女革命ウテナ』との類似がよく指摘されていた本作ですが、ここまで来れば完全に別物ととらえてよいのでは。
「きれいな男尊女卑」から「女のコたちが共に戦う話」に
女性キャラたちが単なる「名誉男性たるソラ様」のちやほや係ではなくなっているところにほっとしました。2巻にもその傾向はありましたが、3巻ではさらに彼女たちの強さや共に戦う覚悟などが強調されています。またソラの方でも、一人でヒーローぶるのではなく、積極的に彼女たちの力に頼っていたりします。1巻を読んだ時点では、ソラがハーレム作って「きれいな男尊女卑」を提示しているだけにも見えてしまった本作ですが、ずいぶんと様相が変わってきており、安心して読めました。
でも、あざといエロが興ざめ
エロを出すなとは言いません。言いませんが、「一方ではエロ表現が抑制されている反面、ソラ絡みでは安直な桃色演出が乱立」というねじれ具合にひっかかりを覚えました。
そもそもこの作品、男子が女子を暴力的に「所有」するという設定なんですから、本来ならば性的な表現はその関係内でいくらでも可能なはず。それをほとんどやらないのは結局、雑誌の年齢コード等の問題があるからでしょう。そこまではいいんですよ、全年齢誌である以上、どこかでラインを引く必要はありますから。あたしがよくわからないのは、そうやって男女間の性表現では一定のブレーキをかける(p. 166のアレとか、ちょっと脱力しました)一方で、ソラの周辺では「ほらほらエロいでしょう」と言わんばかりの即物的なエロアピールが行われることです。文脈無視でキャラクタに指をくわえさせてチュパ音を立てさせてみたり、露出を強調してみたりするあたりが、どうにも安っぽく見えてしまいます。ある種の読者サービスなのかもしれませんが、それにしてももう少し見せ方に工夫があってもよかったのでは。
まとめ
独自設定が増えてきたし、「男気取りの騎士様ウハウハ物」でもなくなってきたし、レイコやツキも良かったしで、楽しく読める1冊でした。欲を言うと、エロ方面でのわざとらしさがなくなってくれれば、もっと嬉しかったかも。あとは、広げた風呂敷をどう畳んでいくのかに期待ですね。