石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

映画『新・百合族 先生、キスしたことありますか?』感想

新・百合族~先生、キスしたことありますか [VHS]新・百合族~先生、キスしたことありますか [VHS]

日活 1994-01-14
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エロく切ない良作

意外な掘り出し物でした。ステレオタイプな思春期百合恋愛物(エロ風味)かと思わせておいて、ちょっとひねりを効かせた切ないストーリー展開に持っていくところが心憎いです。にっかつVシネマだけあって色っぽいシーンの数は特筆ものですが、下品になりすぎずにうまくまとめていると思います。ところどころ描写の古さが気になりますが、10年以上前の作品なので、まあこんなもんでしょう。

伏線のうまさ

ネタバレになってしまうので詳しい言及は避けますが、伏線の張り巡らし方がうまいですね。ところどころで「あれ?」と思いつつも、ドキドキするような映像にごまかされて見過ごしていたのが、最後になって「そうだったのか!」と気づくようになってます。やられました。

キャラクター

表面だけ見ると、主人公さとみは「同性愛に淡い憧れを抱く女子高生」で、綾子は「その女子高生に誘惑される女教師」、晶子は「女子高生に告白され、潔癖さゆえに拒絶してしまう同級生」の、ように見えます。それだけでも十分ドラマにはなりそうですけど、実際には、こいつら、もっと深いです。特にさとみのメスネコぶりがナイス! メスネコでありつつも初々しくてどこか憎めないこの役は、三浦綺音が好演してます。

この話をレズビアン物として見るならば、影の主人公は綾子先生かもですね。同性愛者なのに自分に嘘をついてノンケぶっていた、という役回りは、王道女子校百合ストーリーならたいていは生徒が演じるところですが(そして、レズビアン女教師に手ほどきされて目覚めたりとかするもんですが)、この作品では最後まで悩んでいるのは先生の方なのがおもしろいです。で、なおかつ、タイトルから万人が予想するような陳腐な女子高生と女教師の禁断の愛ストーリーにもなっていないのがいいですね。

役者さんについて

開始後10分でいきなり先生が脱ぎだしたのでたいへん動転しましたが、綺麗な体ですねーこの人。細いのに胸や尻の形が整ってるタイプ、というか。んでもってその1分後ぐらいに主人公も乳をさらけ出すのですが、こちらは「本当に女子高生なんですか?」とツッコミたくなるほどの巨乳。つまり、スリム好みな方もグラマー(って死語?)好みな方も両方お楽しみいただけるキャスティングなわけです。考えたわね。あ、ちなみにこれ、セックスシーンでも何でもないのよ。念の為。

なお、このふたりの演技に比べると、主人公の想い人「晶子」役の吉野公佳はちょっと固い感じ。でも出番が少ないためか、なんとかなってました。

セクシーシーンについて

ビデオのカウンタ見ながらメモをとってみたところ、ほぼ7~8分に1回はセクシーシーンが入ってました。入浴シーンだったり、淡い妄想シーンだったり、キスシーンだったりといろいろですが、AVではないのでモロの描写はございません。しかも、回想や想像を上手く使ったシーンが多いので、よくある「とってつけたようなエロ描写」に陥っていないのが良いです。最初から最後まで股間に手を突っ込みながら棒読みで喘いでるだけのレズAVなんかより、よっぽどセクシーかも。

気になったこと

冒頭にも書いたんですが、ちょっと古臭い描写が多いのが気になりました。

女子高生たちの眉毛が太すぎたり、スカートが長すぎたりするのは「時代だ」の一言で片付けられるけど、クラスメイトの台詞で「不潔よ!」なんていうのはさすがに古すぎ。あと、女子高生は女の先生のことを「女教師(じょきょうし)」なんてあまり言わないと思うんだけどな。もちろん、あえてのレトロ感狙いなのかもしれませんが。

綾子さんが同性愛に対して見せる拒否反応も、古いと言えば古いかなあ。でも、この作品が作られたのが1994年だから、綾子さんの大学時代は80年代後半~90年代初頭ぐらい? なら、そんなにおかしくもないのかも。

まとめ

Vシネマも捨てたもんではないです。さすがにレンタルするには勇気がいりそうな作品ですが、時々TVでやってたりするので、こっそり録画して楽しまれるとよろしいかと思います。