2015年3月12日、ベルリンの裁判所で、3年前に当時15歳のゲイ少年を無理やり女性と結婚させようとしたレバノン人の父親とおじふたりに対し、それぞれ1350ユーロの罰金刑が言い渡されました。罰金を払わない場合、懲役刑もありうるとのこと。
詳細は以下。
Nasser aus Berlin: Vater wollte Sohn zwangsverheiraten - SPIEGEL ONLINE
この少年、Nasser El-Ahmedさんはベルリン生まれ。彼の一家はレバノンからの移民です。2012年10月、Nasserさんは学校でカミングアウトし、そのことを友だち経由で知った家族から虐待されました。おじは彼にガソリンをかけて「火をつけてやる」と脅し、両親は鞭打ったり熱湯でやけどさせたりしたとのこと。
Gay Star Newsで紹介されている談話が生々しいです。
「おじはわたしにガソリンをかけ、火の付いたタバコを手に近づいてきて、『おまえは変態か?』と怒鳴りました。わたしは『ちがう、ちがう』と叫びました」
'My uncle poured petrol over me and came up to me with a lighted cigarette shouting, "Are you queer?" I screamed, "No, no,"' he said.
Nasserさんは虐待から逃れるため2度家出を試みて、2度とも結局失敗しています。
家族たちはしまいに彼をレバノン在住の女性と結婚させると決め、薬を混ぜた飲み物で意識を失わせて、車で国外に連れ出しました。2012年12月10日のことです。その2日後、ルーマニアとブルガリアの国境で国境警備員が車を止め、誘拐の事実が明るみになったとのこと。
今Googleマップで見てみたんですが、ベルリンからルーマニアとブルガリアの国境までというと、だいたい1800kmぐらい。つまり、東京から奄美大島までの距離と同じぐらいですね。子供に異性婚を強要するために、そこまで大移動するとは。しかも、薬まで使って。そんなことをしたって、ゲイを異性愛者に変えることなんかできないのに。
2015年3月12日、Nasserさんは、シャツの左胸に"STOP HOMOPHOBIA"(『ホモフォビアをやめろ』)と書いた大きなステッカーをつけて法廷に立ちました。判決後、彼は「人生のひとつの章が終わり、新しい章が始まる」「今後もセクシュアリティを隠そうとは思わない」と話したとのこと。
なお、現在Nasserさんは偽名で公営住宅に住み、その名前で学校に通っているのだそうです。彼の未来に幸あれ。
ところでこの事件を「レバノンの文化/宗教/伝統のせい」などとして片付けてしまうのは危険だと思います。日本でだって、陸路で他国連れ去りコースこそなくても(ほら、島国だし)、ゲイバレによる「アンタを殺してお母さんも死ぬ」という無理心中修羅場コースってのがありますからね。一服盛られて誘拐・監禁されるのと、「目が覚めたら枕元に出刃包丁を握りしめた親が正座していた」というのとどっちがいいかと訊かれたら、どっちも嫌でしょうそんなもん。ホモフォビアも子供への虐待も、世界中のどこの国であろうと悪でしかなく、それを忘れちゃいけないと思います。