英国のLGBTチャリティー団体ストーンウォールによる世論調査が、同国の医療関係者のLGBTに対する「不健康な」態度を浮き彫りにしています。
詳細は以下。
この調査の対象となったのは、英国全土の医療従事者とソーシャルケアワーカー計3001人。ストーンウォールは、世論調査会社YouGovが実施した調査の結果を、以下のようなインフォグラフィックにまとめました。
Shocked by these stats? Find out how you can help: #UnhealthyAttitudes http://t.co/SC6n1r5ltt pic.twitter.com/pVQZOWz9Ex
— Stonewall (@stonewalluk) 2015, 7月 23
インフォグラフィックの文字部分をざっと訳すと、こんな感じ。
- 患者と接する部門で働く職員の4人に1人は、同僚の同性愛嫌悪的または両性愛嫌悪的な発言を聞いたことがある
- 5人に1人は、同僚が「トラニー」や「シーメイル」などのトランス嫌悪的なことばを使うのを聞いたことがある
- 同性愛者と両性愛者の職員のうち26%は、同僚からいじめや差別を受けた経験がある
- 患者の治療に直接的な責任を持つ職員の5人に3人は、患者の性的指向は医療には関係ないと考えている
- 患者の治療に直接的な責任を持つ職員の10人に1人は、同僚が、同性愛や両性愛を「治す」ことができる人がいるという信念を披露するのを聞いたことがある
- ロンドンだと、この数字は5人に1人にはね上がる
- 28%の医師は、トランスの患者に特有なケアのニーズを満たせる自信がない
- 15%の医師は、同性愛者や両性愛者の患者に特有なケアのニーズを満たせる自信がない
差別禁止法のある英国ですらこれですかい、と目の前が暗くなりますが、個別の報告ではもっとすごいのがありました。
職場の掲示板に、同性愛の嫌悪療法(訳注:同性愛者に電気ショックなどの不快刺激を与えることで同性愛をやめさせ、異性愛者に変えるというもの。医学的なエビデンスはなく、うつや自殺を引き起こすリスクがあります)を宣伝するパンフレットが貼られていました。上司のところに持っていくと、上司はそれを自分の机の上に置きました。パンフレットは机から持ち去られ、また掲示板に貼られました。
A leaflet was put up on a work noticeboard that promoted gay aversion therapy. I brought this to the attention of my manager, who put the leaflet on her desk. It was taken from her desk and re-pinned on the noticeboard.
嫌悪療法でゲイが治るっていうのは、「キツネが憑くから病気になるのだ、杉の葉っぱをいぶしてキツネを追い出せば治るのだ」と主張するのと同じぐらい非科学的なんですけど、それを医療機関でやるかね。この21世紀に。あたしが英国旅行中にうっかり病気になってここを受診したりしたら、このパンフレットを渡されたりしちゃうのかしら。うへー。
ストーンウォールの報告によれば、今回の回答者のうち4人に1人は、多様性や平等についてのトレーニングを「1度も受けたことがない」と答えたとのこと。そのようなトレーニングを受けた人でさえ、トレーニング内容にトランスジェンダーの法的権利が含まれていたという人は約4分の1程度。また、直接患者と接する職種の人のうち4人に3人は、同性パートナーや子どものいる同性カップルの権利についての教育を受けたことがないと回答したそうです。そりゃあ、偏見もはびこるよね。
なお、調査報告の全文はPDFで公開されていますので、詳しく読みたい方は、ぜひそちらを。ところで日本にはこういう調査ってないんでしょうかね。必要だと思うんですが。