Windows 10の新機能が、ゲイの子供の性的指向を親にばらしてしまう(アウティングしてしまう)可能性が指摘されています。
詳細は以下。
Gay kids could be outed to their parents by the new Windows 10 | Gay Star News
問題の機能は子供のデバイスの使用状況をまとめたレポートを保護者が毎週メールで受け取れるというもので、Webサイトの閲覧履歴、閲覧時間、検索語、アプリの使用時間などがわかるとのこと。ちょっと調べてみたんですが、Microsoft公式サイトで説明されてるこれかな?
以下、上記Microsoftのページより引用。
お子様の Microsoft アカウントをファミリーに追加すると、アクティビティ レポートのメールが保護者の方に定期的に送信されます。このレポートには、お子様が PC で費やした時間、アクセスした Web サイト、使用したゲームとアプリ、Bing、Google、Yahoo! 検索などの検索エンジンで検索した語句がまとめられています。
Web の閲覧
アクティビティ レポートのこのセクションには、お子様の最近の検索と、お子様がアクセスまたは閲覧しようとしたサイトがすべて表示されます。ブロックされたサイトの一覧が最初に表示され、その次に、お子様が正常にアクセスできたサイトが続きます。どのサイトも、直接アクティビティ レポートから許可またはブロックすることができます。
この機能、「お子様が安全にPCを利用できるようにする」ためのものなんだそうです。たしかに詐欺サイトやアダルトサイト等から子供を守るには有効なんでしょうが、しかし、子供のプライバシーはどうなる?
子供がいるゲイのコリン・ライス(Colin Rice)さんは、Gay Star Newsに以下のように語っています。
わたしの母親は抑圧的でしたから、もしわたしの子供時代にこの機能があればきっと使っていたことでしょう。
この機能は親子の結びつきにひどい害を及ぼしかねません。そもそも、気味が悪いです。子供の日記を盗み見る行為の現代版だと言っていいでしょう。保護者には子供の安全を確認する必要はありますが、子供に自分自身の場所を持たせてやる必要もまたあるのです。
‘I had a mom that smothered me, and I know she would have done this to me if it was around when I was young.
‘This could be very damaging to parent/child relationships. And apart from that, it’s just really creepy. It’s the modern equivalent to reading your kid’s diary. You need to make sure they’re safe, but you need to let them have their own space as well.’
これには同意。そもそも子供の側からしたら、入念な準備をしてから意を決してカミングアウトしたってひどい目に遭うことが多いのに、親子ともども何の準備もできていないときに「お宅のお子さんゲイサイト見てましたよ」といきなりメールでばらされたら、双方のダメージは計り知れません。
先日のエントリで紹介したThe Cross in the Closetという本を今半分ぐらい読み終えたところなんですが、「ホモフォビックな親から家を追い出された」という子供の実例が既に2つも出て来てましてね。レズビアンのリジー(おそらく大学生ぐらい)は父親から学費を打ち切られ、「オカマ娘! 荷物をまとめて出て行け」と罵られた上に、母親からは「治ったら」家に帰って来いと言われたそうです。ゲイのマットに至っては、なんと8年生のときに家から追い出されています。こういう話は掃いて捨てるほどある(だからシンディ・ローパーがThe True Colors FundでLGBTユースのホームレス問題と戦ったりしてるわけで)だけに、Windows 10のこの機能はかなり危険なんじゃないかなあ。
それにだいたい、シスヘテロの子供だって、ネットでの活動履歴が全部親に筒抜けというのは喜ばしいことではないはず。10年以上前、まさに「子供の日記を盗み見る」タイプの親を持つ子の家庭教師をしていたことがあったんですが、親子関係、最悪でしたよ。その家のお母さんは机の鍵をこじ開けてまで日記も、学校のノートも、友達とやりとりしたメモ用紙の手紙も全部読んでしまうのだそうで、「だから見られて困るものはここに隠してるんだ」と、生徒は秘密の隠し場所を教えてくれました。頭のいい子だったけれど、親への反発からグレにグレていろいろと問題を起こし、結局希望の進路には進めませんでした。Windows 10の「アクティビティレポート」なるものも、下手をすればこれと同じことを引き起こしてしまうのでは。物理的に部屋に侵入したり引き出しの鍵をこじ開けたりしなければいいってもんではないと思うんです。
さらに言うと、いくら監視やペアレンタルコントロールに力を入れようと、ちょっと気の利いた子ならそれをかいくぐる手段を必ず見つけるので、結局のところパターナリスティックな監視&管理そのものに限界があるんじゃないかとも思います。子供の行動をやたらめったら把握しようとするより、危険なものに出くわしてもひっかからないだけのリテラシーの育成や、困ったときに安心して大人に相談できる環境の構築に力を注いだ方が、さきざき応用が利くんじゃないかなあ。理想論かも知れないけど、あたしゃそう思ってます。