石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

米保守派団体、ディズニーアニメの同性間キスシーンに激怒

Disney Star Vs. the Forces of Evil Cinestory Comic

ディズニーのエンターテインメントチャンネル「ディズニーXD」が、アニメ『悪魔バスター★スター・バタフライ』に同性同士のキスシーンを登場させたことを受け、米保守派団体「ワン・ミリオン・マムズ」が激怒しています。

詳細は以下。

One Million Moms Hiss As Disney Airs First Gay Kiss: VIDEO - Towleroad

問題のシーンはこちらです。

これは本国で2017年2月23日に放映されたS2E20"Just Friends"のひとこま。1:25あたりから描かれるさまざまなカップルのキスシーンで、男性同士とおぼしき組み合わせのキスが描かれているのがわかります。

ディズニーがテレビ番組に同性同士のカップルを登場させるのはこれが初めてではなく、2014年には実写シットコム『グッドラック・チャーリー』でレズビアンカップルを親に持つ子供を描いて話題を呼んでいます。また、米国のアニメにクィアな要素が出てくるのも、今ではもう珍しいことではありません。たとえばニコロデオンの『ザ・ラウド・ハウス(The Loud House)』は2016年に既婚ゲイカップルを登場させていますし、カートゥーン・ネットワークは2014年に『クラレンス(Clarence)』でレズビアン・マザーを描いています。同じくカートゥーン・ネットワークの『スティーブン・ユニバース(Steven Universe)』は、非ヘテロのカップルのみならずジェンダークィアな(性別二元論にとらわれない)表現が多いことでも有名です。ただし、ディズニーのアニメで同性間のキスが描かれたのはこれが初めてなので、それでちょっと話題になっているふしはあります。

ゲイに肯定的なあらゆるものへのボイコットにいそしむアンチゲイ団体「ワン・ミリオン・マムズ」(One Million Moms)が、上記のキスシーンに嚙みつかないはずはありません。同団体はさっそくWebサイトで、「性的指向に関するコンテンツは、親が子供の眼前にもっとも突き付けられたくないと思うもの」であるという持論を展開し、「家族向けの(family-friendly)娯楽を提供しない限りディズニーを支持しない」とディズニーに訴えかけるための署名運動を始めています。日本時間で2017年3月4日現在、署名はまだ4万筆にも達していません。前々から言われていることですが、どう考えても100万人(ワン・ミリオン)もいないよね、この団体。

「ワン・ミリオン・マムズ」の上記の主張が根本的におかしいのは、(1)世の中の親も子も決して全員が異性愛者というわけではなく、(2)非ヘテロの家族もまた家族であり、(3)子供にヘテロ以外の性的指向について偏見を持ってほしくないと思っている親も少なくないということを無視しているという点です。冷静に現実を見れば、たとえ親子ともどもシスジェンダーの異性愛者であろうとも、友達の親が同性同士のカップルだったり、街中でゲイカップルを見かけたり、あるいは身近な人がクィアだったりすることはもはや珍しくない(『いいや珍しい!』とお思いの方は、統計調査の結果をごらんになるといいと思います。これとかこれとか)わけで、前述の『グッドラック・チャーリー』や『クラレンス』等々はそうした現実により忠実な作品づくりをしているだけなのでは。これまでこの団体のボイコットが企業に影響をもたらしたためしはないので今回も大丈夫かとは思いますが、トランプ政権で差別にお墨付きが出たと思って調子づいているホモフォーブが彼女らの尻馬に乗らないか、それだけが心配です。