石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

「子供たちに『やり遂げられる』と示したい」: ビヨンセで踊るゲイ警官語る

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バージニア州のハイスクールの行事で、ビヨンセの曲に合わせて踊ったゲイの警察官の動画がネットを席巻しています。ダンスだけではなく、この警官の談話がまたすばらしいんですよ。

詳細は以下。

This Police Officer Dancing To Beyoncé Will Heal Your Soul

まずは動画をどうぞ。曲目はビヨンセの「フォーメーション」です。そう、あのスーパーボウルのハーフタイムで使われた曲ね。

この男性、Deuntay Diggsさんは、同州スタッフォード郡保安官事務所に勤める警部補(2nd Lieutenant)さん。31歳。ドラッグや売春が渦巻く劣悪な環境からバージニア州立軍人養成大学に進学し、同大学で初めてゲイとしてカミングアウトした学生となった人なのだそうです。彼がカミングアウトに踏み切ったのは、黙っていたら学校で叩き込まれた「高潔と誠実(integrity and honesty)」という理念にそむくことになると思ったから。しかしながら、このカミングアウトに関しては、いろいろ苦労もあったのだそうです。

「まず最初にしたのは、里親に言うこと。言ったら捨てられました」とDiggsは語った。「学校でひとりの人に話して、誰にも言わないでくれと頼んだら、またたく間にそこらじゅうに噂を広められました。そこからほぼ1年間、ひとりぼっちでした。人生で最悪の1年間であり、また最良の1年間でもありました。わたしはいかにして自分自身を愛するか、そして、自分は何になりたいのかを考えねばなりませんでした」

“The first thing I did was tell my foster family, and after I told them they disowned me,” Diggs said. “I told one person at the school, and I asked her not to tell anybody, and [then it] spread like wildfire. I spent roughly the next year in isolation. That was the worst year of my life, but also the best. I had to figure out how to love myself, and what I wanted to be.”

卒業後警察官になり、良きフィアンセにも巡り合ったというDiggsさんですが、本当はこの日のダンスはキャンセルするはずだったのだそうです。理由は、生みのお母さんが末期がんで余命2ヶ月の宣告を受けたから。それがなぜ結局キャンセルにならなかったのかというと、いきさつはこうです。

「母と座って話をしているとき、こう言ったんです。『ぼくの結婚式に来てほしいな、ぼくらは一緒に踊ることになってるから』。母はわたしが踊っているところの動画をひとつも見たことがありませんでした。そのまま座って少し笑って、動画を見て、母はこう言ったんです。『ねえ、おまえにはダンスをやめないでほしいわ』。それでもう一度学校に行って、キャンセルはしないと言ったんですよ」

“We’re sitting there talking and I said, ‘Well, I want you at my wedding because we’re supposed to dance together.’ And she hasn’t seen any of my dancing videos. So we sat and laughed for a little bit and watched the videos, and she said, ‘Well, I want you to keep on dancing.’ So I came back and I told them I wasn’t going to cancel.”

なお、学校でこのようなダンスを披露する理由について、Diggsさんはこんな風に話しているとのこと。

「わたしがこういうことをしているのは、子供たちにきみらはやり遂げられるんだ、生き抜くことができ、成功できるんだと示すためです」

“The reason I’m doing this is to show kids that they can make it, that they can survive, that they can be successful, he said. ”

すばらしいな。

元記事を読んでいる間じゅう、どうしても先日の一橋大学でのアウティング事件のことを考えずにはいられませんでした。Diggsさんの談話の、学校でゲイだという噂を広められたという部分は、原文では「燎原の火のように(like wildfire)」話が広がったと形容されているのですが、すごく的確なたとえだと思います。被害者にしてみれば、こういうのって本当にごうごう燃え盛るカリフォルニアの山火事を見てるようなもんですから。一旦燃え広がったら自力では消しようがなく、運が悪ければ命にまでかかわるという点が、まさに火事です。Diggsさんがやっているのは、今現在困っている子供たちに向かって「あきらめるな」と救助ヘリからロープを下ろすということであり、何よりも必要なことなんじゃないかと思いました。尊敬するし、自分もこういう大人でありたいと強く思います。