石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

豪シドニーでトランプ支持者がゲイ男性に暴行

Donald Trump - This BIG!
Donald Trump - This BIG! / DonkeyHotey

豪州シドニーのマクドナルドで列に並んでいたふたりの男性が、ホモフォビックなトランプ支持者から暴力をふるわれて出血するけがを負い、ひとりが救急車で病院に搬送されました。警察は、暴行罪と闘争罪の疑いで18歳と21歳の男を逮捕したと発表しています。

詳細は以下。

Two men attacked in Sydney by homophobic Donald Trump supporter - Star Observer

事件が起こったのは2016年11月27日。ニュータウン(Newtown)近くのマクドナルドで、サムさんとアンドリューさん(プライバシー保護のため、両者ともファーストネームのみの仮名で報道されています)というゲイ男性ふたりが列に並んでいたところ、酔っぱらった若い男性が「トランプが勝ったんだから白人男性が最強なんだ」とけんか腰で言い始めたのだそうです。そこでサムさんが「自分はゲイですが、何か問題でも?」と言ったところ、若者は激高し、台詞をこう変えたとのこと。

「トランプが勝った、異性愛者の白人男性が最強だ」

‘Trump’s won, straight white men rule’.

彼はこう叫びながらサムさんたちに飛びかかろうとし、一緒にいた友人たちに止められて店の外に連れて行かれました。ところがこの男、それでもあきらめず、サムさんたちがマクドナルドを出るのを待ち構えていて、怒鳴りながら襲い掛かったのだそうです。サムさんは殴り倒されて顔中血まみれになるけがを負い、アンドリューさんもガラスと思われる物で顔を殴られて出血したと話しています。若者の友人たちは若者を引きずって逃げようとしましたが、駆け付けた警察が彼らを逮捕し、サムさんは救急車で病院に運ばれました。

news.com.auによると、ニューサウスウェールズ警察のスポークスパーソンは、ニュータウンの警察署兼地方司令部(LAC)は、逮捕した18歳と21歳の男を暴行罪と闘争罪の疑いで告発したと話しているそうです。

以下、サムさんのことば。

「もう2016年だからというだけの理由で、すべて大丈夫だろうと思ってはいけません。今世界で起こっていることは、人々の判断や心的傾向に明らかに影響を及ぼしているのですから」と彼は言った。

「LGBTIコミュニティーの中でお互いに連絡を取り合って、こうしたことについてもっと話し合うよう手段を講じる必要があると思います」

“Don’t just assume it’s 2016 and everything’s okay, because clearly what’s happening in the world is affecting people’s judgement and mentality,” he said.

“I think in the LGBTI community we need to check in with each other and make sure we talk more about these things.”

「トランプの差別発言は人気取りのためのパフォーマンスで、いざ政権をとったらそこまでひどいことはしないだろう」と主張する人を、ここ日本でもときどき見かけます。しかし、百歩譲ってトランプ本人が差別的な政策をとらなかったとしても、彼の当選で差別やヘイトが正当化されたと勘違いした人々がこうして加害行為に邁進しているのでは、マイノリティにとっては同じことです。しかもこれ、米国本国の話ですらないのよ。オーストラリアなのよ。もうどこにいたって安全じゃないわよ。

きのうのエントリで、トランプ当選で総毛立つほどterrifiedしたと書きましたが、それは「自分が地球上で(少なくとも、建前上は)安全に歩ける場所がいきなり約950万平方キロメートル減った」という感覚に起因するものでした。「あたしゃエリザベス・ビショップじゃないんだから『失うことの術(The art of losing)*1』なんてそうそう学べないよ、街や川や大陸をごっそり失ったら立ち上がれないよ」と思っていたのですが、こうしてみると、失ったものはそれだけでは済まなかったのかも。これから4年間、いやひょっとしたらもっと、どうやって生き延びて行ったらいいんでしょうか。

*1:映画『イン・ハー・シューズ』で使われたあの詩の一節です。参考:One Art by Elizabeth Bishop | Poetry Foundation