石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

トランプ就任式で歌った歌手、トランスジェンダーの姉の権利を今になって心配(遅いよ!)

Awakening

米国のトランプ大統領就任式に出演した歌手のジャッキー・エヴァンコが2月22日、トランプ政権の「トイレ法」に関する政策への失望を表明しました。ジャッキーの姉はトランス女性なんだそうですが、それでなぜこうなるとわかっていなかったのか謎。

詳細は以下。

Trump’s inauguration singer is upset with him for attacking her trans sister’s rights · PinkNews

まず「トイレ法(bathroom bill)」というのは、トランスジェンダーの人々が性自認通りの公衆トイレ等を使う権利について規定する法律のことです。オバマ政権下では、性差別を禁じた連邦教育法第9編(Title IX)を根拠とし、公立学校はトランスジェンダーの子供たちが性自認通りのトイレを使用することを認めねばならないとするガイドラインが示されていました。しかしトランプ政権は2017年2月22日、このガイドラインを廃止すると公式に発表。ホワイトハウス報道官のショーン・スパイサー(Sean Spicer)氏によると、トランプは「州の権利を固く信じており、このような事柄を連邦レベルで扱うのは最良ではないと考えている」とのことです。早い話が、各州が差別的な「トイレ法」を制定して、トランスジェンダーの子供たちが公立学校でさえ差別されるようになっても連邦政府は介入しないと宣言したってことですよこれは。

話をジャッキー・エヴァンコ(Jackie Evancho)に戻すと、彼女の姉であるジュリエット・エヴァンコ(Juliet Evancho)さんはトランスジェンダー女性であり、まさにこのトイレの問題で学校を相手に法廷で争っているところなのだそうです。で、ジャッキーがホワイトハウスからの発表を受けて2月22日にTwitterでつぶやいたのがこちら。

訳:「トイレの問題を州に決めさせるという大統領の判断に、はっきりと失望しています。#トランスジェンダー #姉妹愛」。

訳「ドナルド・トランプ、あなたの就任式で歌えて光栄でした。わたしと姉に、トランスジェンダーの権利について話をするためにお目にかからせてください」。

言いたいことはわからないでもないのですが、トランプ政権になったらトランスジェンダーの人々の市民権が危機にさらされ得るという懸念の声は前々から上がっていたはず。大統領選直後にはもう、トランスジェンダーの人々の間で、身分証明書のジェンダー変更ラッシュが起こっていたぐらいです。それなのに、今頃になって「失望した」って。気づくの、遅すぎない? いくら彼女がまだ10代だからと言っても。

もうひとつもやもやするのは、トランプがあれだけ移民はレイピストだとか国境に壁を作るとか言い続け、就任後も即移民排斥に乗り出したことはスルーで、身内のトランスジェンダー女性も差別の対象になるとわかったとたん「失望している」と言い出すという態度です。あたかも「有色人種のことはどうでもいいが、白人様の身内まで累が及ぶのは困る」と言ってるも同然じゃないですか、これじゃ。

これとちょっと似ているような気がするのが、最近伝えられたマイロ・ヤノポロス(Milo Yiannopoulos)の「ブライトバート・ニュース(Breitbart News)」辞任のニュースです。これは日本語でも報道されていますので、詳しくは以下をどうぞ。

あれだけ女性や非白人、トランスジェンダーの人々に対する憎悪扇動発言を全米で繰り広げていても「言論の自由」という名目で擁護され続けてきたヤノポロスが、小児性愛是認発言では一発でアウトとなったというのは示唆的だと思います。結局これも「白人様の身内(子供)が被害を受けるのは困る」というだけのことなんじゃないかと。そんなわけで、ジャッキーが失望しようとマイロが辞任しようと、あたしの頭の中では『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』シーズン4の「白人の権利! 白人の権利("White Lives Matter! White Lives Matter!")」というシュプレヒコールの場面しか浮かんでこないんでした。つらい。