人気TV番組『ル・ポールのドラァグ・レース』シーズン8の勝者、ボブ・ザ・ドラァグクイーン(Bob the Drag Queen)がスーパーヒーローとして活躍するコミックがInstagramで発表されました。作者はオープンリー・ゲイのコメディアンのマテオ・レーン(Matteo Lane)です。
詳細は以下。
Bob The Drag Queen Is A Superhero In New Insta Comic | NewNowNext
コミックはこちら。(スライドショーになっています)
このコミックのストーリーは、カフェで最低賃金で働いている主人公ボブが、いじめられている小柄なゲイの叫び声を聞きつけてスーパーヒーロー「キックアス・ドラァグクイーン」に変身し、悪い奴らをやっつけるというもの。変身のアイテムは魔法の王冠、登場時の決め台詞は「ファーストネームはキックアス、ラストネームはドラァグクイーン!」、パンチの効果音はシェール(Cher)!」や「プレップ(PREP、HIV予防薬のこと)」です。「エピソード1」とあるってことは、シリーズ化されるのかな?
このニュースを読みながらあたしが思い出していたのは、先日BuzzFeedが発表した、「LGBTの人たちがカミングアウトしたとき力になってくれた55のもの(55 Things That Helped LGBT People When They Were Coming Out)」という記事のことでした。「音楽」、「本」、「テレビと映画」、「インターネット」、「アドバイスや情報・援助の供給源」の5つのカテゴリーごとにさまざまな人の体験談を集めたこの記事で、『ル・ポールのドラァグ・レース』が力になってくれたと言っている人がいたんですよ。以下、その人のコメントをちょっと訳してみます。
ぼくは男らしくないゲイ男性で、ずっとオカマと言われていた。その言葉の意味も知らない頃からね。
カミングアウトしたとき、最初は、この新しいコミュニティで受け入れてもらうには、ある種のお決まりの外見で、お決まりのふるまいをしなくちゃいけないんだと思っていた。でも、『ル・ポールのドラァグ・レース』を見て初めて、フェミニンであってもいいんだ、社会で「これが正常」とされている決まりごとを拒絶してもいいんだ、他の人がどう思うかなんてクソくらえと思っていいんだとわかった。正直言って人生が変わったし、おそらくこれで命を救われた。もう絶対に後戻りしたりしない。ありがとう、ママ・ル。
I'm an effeminate gay man, and had been called 'faggot' long before I knew what it meant.
Initially when I came out, I thought that to be accepted into this new community I needed to look a certain way, act a certain way, etc. It wasn't until I watched RuPaul's Drag Race that I realised I can be feminine, I can reject social norms, and I don't have to give a damn what other people think. It honestly changed my life and in reality it probably saved my life. And I will never look back. Thank you, Mama Ru."
「ゲイがみんな女装すると思われたくない」などの理由でドラァグに拒絶反応を示す人もいますが、ドラァグのパフォーマンスにはこうしたエンパワメントの力もあるということを忘れてはならないと思います。このコミックがドラァグを主人公にしたのは目先の変わったヒーローを描くためでも、ましてや一種のアファーマティブ・アクションとしてスーパーヒーロー界のマイノリティ枠を満たすためでもなく、純粋に(そしてコミカルに)ドラァグの持つ力をたたえるためなんじゃないかとあたしは思いました。ぜひ続きが読みたいです。