ラヴァーン・コックスが弁護士役で出ている法廷ドラマ『Doubt』S1E4に、3人のトランス女性が友達同士でサラダを食べながらデートについてあれこれ話し合う場面が登場しました。これがいかに画期的なことか、Vultureが詳しく報じています。
詳細は以下。
The Groundbreaking Trans TV Moment on Laverne Cox’s ‘Doubt’
まずその場面の動画をどうぞ。
上記動画で描かれているのは、ラヴァーン演じる弁護士キャメロン・ワースが、女友達のマケイラ(ジェン・リチャーズ)とヴァレンティナ(アンジェリカ・ロス)を相手に、最近ある男性から受けたお誘いに答えるべきかどうか相談する場面。マケイラが「あの人あなたの元カレよりいいんじゃない?」と答える一方、ヴァレンティナは「あいつは女ったらし」と言ったりしています。Vultureでも指摘されていますが、会話の内容だけを見るなら、『セックス・アンド・ザ・シティ』等にいくらでも出てきそうな、特に珍しくもない場面ですよね。この場面が画期的なのは、このホワイトカラーの女性3人がすべてトランスジェンダーで、しかもトランスジェンダーの女優が演じているということ。こんな場面を実現させたドラマは、これまでなかったんです。
Amazonオリジナルドラマ『トランスペアレント』にはトランスのキャラが数こそたくさん出て来ますが、主役のトランス女性を演じているジェフリー・タンバーはシス男性です。Netflixドラマ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』や『sense8』ではそれぞれトランスの女優がトランス役を演じていますが、前者は受刑者、後者はFBIから追われる逃亡者の役であり、トランスジェンダーの人同士の平和な日常会話は出て来ません。それにそもそもGLAADの報告によれば、TVドラマ界ではトランスの登場人物自体がとても少なく、レギュラーまたは定期的に出てくるキャラともなると2016~2017年度では16人しかいなかったらしいんですね。GLAADはまた、2002年からの10年間でTVに出てきたトランスジェンダーの登場人物は「被害者」(40%)と「殺人犯または悪役」(21%)が大半を占めていて、職業ではセックスワーカーとして描かれることがもっとも多かった(20%)とも指摘しています。まとめると、(1)まず絶対数が少なく、(2)その少ない役でさえシスジェンダーの俳優に持っていかれたりしていて、(3)おまけに描写が偏りがち、というのがドラマにおけるトランスキャラの現状なわけ。上記動画の平和なランチの場面の表現がどれほど貴重なものなのか、おわかりいただけたでしょうか。
『Doubt』でもうひとつすばらしいのは、主人公のストーリーラインの構築にもトランスジェンダーの脚本家、イモジェン・ビニーが携わっていること。前述のジェフリー・タンバーは2016年のエミー賞受賞スピーチで、トランスジェンダーの「脚本家や、ディレクターや、プロデューサーや、主人公」をもっと増やすべきだと訴えていましたが、『Doubt』は本当に脚本も主人公もトランスジェンダーの人がやっているわけです。残念ながらこのドラマはシーズン1で打ち切りとなり、全11話で終わってしまったのですが、(第1話を購入して視聴した限りでは、確かにドラマとしての出来はそれほどよくなかったと思います)、今後ドラマ界でこういう意欲的な取り組みがどんどん増えていくことを強く願っています。