石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

「期待はしない」アトラスのゲーム『キャサリン・フルボディ』に海外から警戒の声

キャサリン(特典なし) - PS3

日本のゲームメーカー、アトラスが2018年冬発売を予定しているソフト『キャサリン・フルボディ』に、海外のゲームファンから警戒の声が上がっています。この作品のリメイク元『キャサリン』のトランスフォビアが改善されているようには見えないというのがその理由です。

詳細は以下。

Japanese game developer Atlus accused of transphobia in their new game, Catherine: Full Body

『キャサリン・フルボディ』のプロモーション動画はこちら。

4Gamer.netによれば、これはプレイステーション4/プレイステーションVita用のアクションパズルゲーム。オリジナル版『キャサリン』に新たにもうひとりのキャラが追加され、四角関係の物語が楽しめるとのことです。

ただGay Star Newsによると、その前作『キャサリン」はトランスフォビアがひどいとしてさんざん批判を受けたゲームなんだそうで。具体的にはトランスジェンダー女性のキャラ「エリカ・アンダーソン」の性自認を何度も笑いのネタにしたり、男性しか見ない悪夢をエリカに見させ、「本当は男だから」その夢を見たのだということにしたり、さらにはマニュアルやエンドクレジットにこのキャラを性別移行前の名前で載せたりした点などが問題視されていたのだそうです。

にもかかわらず、上に貼った『キャサリン・フルボディ』のトレイラーには、男性主人公ヴィンセントがピンク色の髪のミステリアスな新キャラ・リンの股間を見つめて脂汗を流しながら絶叫する場面が含まれています。これを見た海外のゲームファンからは早くも失望と警戒の声が上がっており、Gay Star Newsではそうしたファンたちによるツイートが全部で15個紹介されています。うち4ツイートだけ、以下に貼り付けて和訳してみました。

訳:「キャサリンのリメイクのトレイラー。3つ目の恋愛関係のオプションは、ヴィンセントが自分が寝たことにショックを受けるトランス女性になるようだ。ゲーッ。ああ、こうなるよねやっぱり」。

訳:「『ひょっとしたらアトラスは、今度ばかりは性的アイデンティティーにちゃんと取り組むかも』
自分『ダウト』」。

訳:「悲しくなる。キャサリンのテーマやキャラは好きだし、エリカ関連の脚本は嫌いでもエリカのことは大好きだから。それで、このゲームは本当に好きだけど、もう好きでいたいと思わない。なぜなら、アトラスにはトランスフォビックにならないということを学ぶ気がないから」。

訳:「自分『リメイクでキャサリンから時代遅れのトランスフォビアが取り除かれるといいな』

アトラス『まさかと思うでしょうが、時代遅れのトランスフォビアをさらに増やして、そこにゲームの焦点を当てました』

自分『わ か っ た よ』」。

個人的には、上記プロモーション動画はまず前述の股間凝視絶叫場面がいわゆる「トランス・パニック・ディフェンス」をもろに正当化しかねない描写になっているところがよくないと思いました。シス男性が性的に近づいた相手がシス女性ではなかったらパニックを起こして当然ですよ、側から見て笑われるような滑稽なことなんですよと煽るのは、現実世界のトランス女性たちがそうしたパニックや恥の意識を理由として殴られたり殺されたりしていることを考えると、極めて不適切です。ほんの一例ですが、以下のニュースあたりが参考になるかも。

その他に気になったのは、はしゃいだ雰囲気で♂マークと♀マークを乱舞させながら「問題作が大問題作へと」進化したというキャッチコピーを打ち出しているところ。シス男性がトランス女性とロマンティックな関係を持つことをして「『問題』作」、トランスキャラが2人に増えたことをして「『大問題』作」と称しているのだとしたら、アトラスは『キャサリン』のトランスフォビアに対する批判をまったく知らないか、知った上で無視しているってことになるのでは。全部杞憂ならいいんですが、その可能性があんまり高くなさそうなところがつらい。

それにしても、『トモダチコレクション』や『ファイアーエムブレム』などに関するニュースのおかげで、日本のゲーム界の同性愛に対する認識がひどく遅れていることはわかっていたつもりなんですが、トランスジェンダーキャラの描写についてもこんなものだったとは。「クールジャパン」なんて名ばかりで、クールじゃないことおびただしいわまったく。