英国ロンドンのバス内で女性同士のカップル（2019年6月16日追記：初期報道ではこのふたりは「レズビアン」と呼ばれていましたが、後日ふたりのうちのひとり（Chrisさん）が自分はバクセクシュアルだと明言しています）にキスをして見せろと要求し、断られて暴力をふるい、さらに金品を強奪したとして、警察が4人のティーンエイジャーを逮捕しました。
被害に遭ったMelania Geymonatさんはウルグアイ人。彼女は2019年5月30日、恋人のクリス（Chris）さんと一緒にカムデン・タウン（Camden Town）行きのバスに乗っていてこの4人の男らに襲われたと説明しています。GeymonatさんのFacebookポストによると、加害者らはふたりに対し、自分たちが見て楽しめるようにキスをしてみせろと要求し、『貝合わせ（scissors）』がどうのこうのとセックスの体位についてコメントをし、さらにコインを投げつけてきたとのこと。他に乗客はなく（時刻は午前2時半ごろだったそうです）、Geymonatさんらが冗談を言ったり、気分が悪いふりをしたりしてはぐらかそうとしても嫌がらせは止まらず、しまいにふたりとも激しく殴打されて流血に至ったのだそうです。
Geymonatさんは恋人が3人がかりで殴られていたことと、自分も殴られて血を流しながら倒れたことを覚えているとのこと。その後の記憶は混濁していて、警察が来たと気づいた時点では、もうGeymonatさんは全身血まみれになっていたそうです。さらに、ふたりとも所持品を奪われていたとのこと。
事件後のふたりの写真はこちら。
Hablamos con la uruguaya atacada en Londres: https://t.co/OUkQ9jTs9b pic.twitter.com/nHXtw2oAVJ
— CNN en Español (@CNNEE) 2019年6月7日
ロンドン市警は6月7日、この事件に関係しているとみられる15歳から18歳の男を6月7日に逮捕したと発表しました。警察は防犯カメラの映像を調査するとともに、この事件に関する情報を広く募っているところだそうです。
レズビアンカップルに対して、ふたりが性的なことをしているところを「見たい」と無邪気に口に出す異性愛者男性は少なくありません。ヘテロ男性の友人知人がそう多くもないあたしですら、何回か言われたことがあるぐらいです。楽しい軽口のつもりで「（男の欲望を受け入れないだなんて）もったいない」だの、「交ざりたい」だのと言っちゃう人も多いよね。でもそういうの、全部こういう暴力と地続きですから。女性を愛する女性を、主体性やプライバシーの権利がある人間とみなさず、「俺（たち）が楽しむために当然使っていいエログッズ」扱いしていいのだという価値観が蔓延してるからこそ、こういう事件が起こるんだよ。いや、ここでこんなこと言っても「ことばで言うだけなら差別じゃない」マンとか、「俺の『見たい』はきれいな『見たい』」マンとか、「ぼくがかんがえたさいきょうのさべつかいしょうほう」披露マンとかが現れるだけなのはわかりきってるんですが、(1)女性同士で交際した経験があって、(2)その際、「見たい（見せろ）」「もったいない」「交ざりたい」などと言われたことがある、の2点を満たしてない人が想像だけで*1ジャッジできるような問題じゃありませんよこれって。
*1:『想像だけで』という点が問題なのであって、ジェンダーや性的指向が何であれ、普段から経験者の話を傾聴している人や、先行事例についての報道や研究を読み込んでいる人ならまた話は変わってくると思います。
