石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

ナヤ・リベラ死去

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ドラマ『Glee』のサンタナ役女優、ナヤ・リベラ(Naya Rivera)が湖で行方不明となり、7月13日に遺体で発見されました。死因は溺死で、事件性はないとみられています。もうさんざん日本でも報道されているけど、日本語圏のニュース記事は時間がたつと消えちゃうものが多いので、とりあえずCNNの記事を以下に貼っておきます。

edition.cnn.com

ナヤ・リベラが『Glee』で演じたサンタナ・ロペスというキャラはレズビアンのチアリーダーです。このサンタナと、ハイスクールの親友でのちに妻となるブリタニー(ヘザー・モリス/Heather Morris)とのラブストーリーは、シップネーム“Brittana” のもと世界中のレズビアンやバイセクシュアルやクエスチョニングのファンたちを熱狂させました。特に、自分たちの姿を初めてメインストリームのTVの中に見出すことができたティーンエイジャーのクィア女性たちが、どんなにこのBrittanaに励まされたことか。『Glee』の制作者ライアン・マーフィー、ブラッド・ファルチャック、イアン・ブレナンも、ナヤの訃報に関する共同声明で明確にそのことについて述べ、ナヤがいかにファンのためを思ってサンタナ役に力を注いでいたのか語っていたりします。詳しくは下記リンク先をどうぞ。

tvline.com

ナヤ・リベラのことでもうひとつ忘れてはならないのは、彼女が人種的にいつも「その他」とされてしまう複雑なバックグラウンドを持っていて、そのために『Glee』以前はなかなか大きな役をもらえずにいたということ。アフリカ系・ドイツ系・プエルトリコ系のルーツを持つ彼女は、「黒人にしては白すぎ、ラテンアメリカ系にしては黒すぎ、白人にしてはあまりに多岐にわたって非白人的すぎて」(本人談)、人種を単純明快なステレオタイプでとらえてしまいがちなエンタメ業界で役を得るのは大変だったのだそうです。

その彼女をレギュラーに起用し、しかも同性愛者の役を振った『Glee』が大ヒット*1したのが2009年。なんだよ、「アメリカのエンタメは『多様性の押し付け』と『ポリコレ』のせいでつまらなくなった」とか、やっぱり大嘘じゃねえか。

とりあえず当分の間、サンタナの曲のプレイリストをSpotifyでとっかえひっかえしながらナヤ・リベラの死を悼むつもりです。訃報を知ってすぐ聴いたRumor Has It / Someone Like Youの、サンタナのソロパートの最初の単語3個だけで、もう心臓をわしづかみされる思いでした。ナヤのこともサンタナのこともずっと忘れないし、感謝し続けますよ。ライターのドロシー・スナーカー(Dorothy Snarker)氏が指摘している通り、サンタナというキャラはこれからもいつまでも新しい世代のクィア女性の命を救い続けるはずだから。

*1:念のために書き添えておくと、『Glee』は米国で最高2600万人以上もの視聴者数を叩き出し(いや、シーズンにより浮き沈みはありましたが)、世界数十か国で放送された番組です。