石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

同性愛を病気と「診断」 スペイン・ムルシア

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スペイン・ムルシアの産婦人科医が、19歳のレズビアンの患者に「現在かかっている病気:同性愛」と記載した書類を渡し、批判を浴びています。患者の家族は、正式な苦情を保健局(Servicio Murciano de Salud)に提出する予定だとのこと。

詳細は以下。

www.eldiario.es

この女性は2021年10月4日、頻発月経の治療のため、スペイン南東部ムルシアの公立レイナ・ソフィア(Reina Sofía)病院の産婦人科を受診していました。産婦人科医は、同性愛者であることを書類に書いてもいいかと彼女に質問。19歳のレズビアンは驚きつつも、診察時に経腟プローブを腟内に挿入するのが大変だったことから、それが何か重要な情報なのかと思って同意したんだそうです。

でもその後、医師から渡された報告書には、経腟プローブのことなんか全然書かれてなかったんです。単に、「現在かかっている病気」の欄に「同性愛」と打ち込まれていただけ。画像は以下をどうぞ。

意味がわかりません。頻発月経で受診したら「あなたの病気は『同性愛』」って、それ、診断じゃないだろ。

この患者は家族や地元LGTBI団体Galactycoと相談し、保健局に正式な苦情を提出して医療記録から「侮辱的な(vejatoria)」記述を削除するよう求めることにしたとのこと。Galactycoは、このような例は他にも多数あると述べ、WHOが同性愛を精神疾患のリストから外して31年たつのに、ムルシアではいまだに一部の医師が性的指向を病気とみなしつづけていると説明しているそうです。

ちなみにこの産婦人科医はEl Españolのインタビューで、今回の件は間違って押すつもりのないボタンを押してしまったために起こった入力ミスであると話しています。つまり、別の欄にHOMOSEXUALと記入しようとしていたのに、キー操作のミスでカーソルが診断名の欄に移ってしまっていて、それに気づかなかったと。ありえない話ではないし、それが本当なら「よかった、ホモフォビックな医師はいなかったんだね」で済むんですが、それでもひっかかる点がひとつ。この医師、El Españolの同じインタビューで、レズビアンの患者が修正済みの書類を病院に取りにきたときの様子を「『今は』態度は良くて整合性がある」などとエラソーにジャッジした上で、「彼女が最初にすべきだったのは私のドアをノックして『先生、書類に書いてあることを見てください』と言うことだったのに、そうしなかった。団体だかなんだか知らんが、そこに行って、クレームをつけた。それでメディアの大騒ぎが起こった」とかなんとか言って被害者ぶったりもしてるんですよ。つまりこの人、

  1. 医師から病名欄に「同性愛」と書かれることが、同性愛者にとってどれだけ警戒心やネガティブな記憶を呼び起こされるものなのかわかっていない
  2. 19歳の女の子が、敵対的なホモフォーブかもしれない男と1対1で対峙するのがどれだけ怖いことなのかわかっていない
  3. LGBTI団体に助力をあおぐことを「態度が悪くて支離滅裂な」ことだと思っている

……ってわけで、たとえホモフォビックではなかったとしても、無知で鈍感でいけすかねえ野郎だとあたしゃ思いましたね。ムルシアで産婦人科領域の病気になっても、この医師にはかからないようにしよう。