石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

PCゲーム『その花びらにくちづけを』(ふぐり屋)レビュー

その花びらにくちづけを 新装版

その花びらにくちづけを 新装版

アマアマでラブラブな学園百合アドベンチャー

ガチな人の目から見て、ちょっと残念なところがないわけではありません。けれど、その「残念なところ」を残しつつもやはり買って損はない作品だと思いました。とにかくアマアマでラブラブで、男の乱入もないし、変なバイブやディルドも登場しないし、絵も声優さんもナイス。特に絵は、キャラの間に愛が感じられてとてもとてもよかったです。ふぐり屋さんでは続編(『玲緒&麻衣編』と『紗良&楓編』)を製作中だとのことですが、買いますよあたしゃ両方とも。

ガチ視点だとここが残念

さて、では、こんなに素晴らしい作品のどこが「残念」だったのか。ヘテロさんには気にならない点かも知れませんが、あたしはこんなところがちょっと気になりました。

その1:トゥルーエンドの七海の台詞が微妙

トゥルーエンド(スタッフロールがある方のエンディング)の七海のセリフのことなんですが、 あれだけ「好き」だの「愛してる」だのと大騒ぎして一晩中セックスした翌朝、しかも今のところ何のトラブルも起こっていないのに、もう将来別れることをシミュレーションして微妙に諦めモードに入っているというのがちょっと変な気がしました。

「百合関係は思春期限定で儚く終わるもの」っていう発想が百合好きユーザ層の一部にあるのはわかりますよ。でも、当のキャラクタにまでその視点を持たせちゃいかんでしょう。それは野次馬の、または第三者の視点であって、恋(たとえ結果として短命に終わる運命の恋であっても)の渦中にある人の視点ではないからです。もしも『ロミオとジュリエット』のジュリエットが「いつかは別れるかもね~」なんて呑気に考えながらロミオにキスをしていたら、恋の熱さも悲恋の切なさも台無しだと思いませんか? 女の子同士だって、それは同じことですよ。

すごく意地悪な見方をするならば、この台詞ひとつで、「七海は本当はたいして優菜を好きではなくて、単に第三者的に『なんちゃってレズ』状態を楽しんでいるだけだった」という解釈すら成り立ってしまいます。そこまでの展開がかなりアマアマでラブラブだっただけに、このラストの微妙な台詞がかえすがえすも惜しかったなあ。ちなみにもうひとつのエンディング(スタッフロール無し)だとこの台詞は無く、しかもバッドエンドでもないので、あたしの脳内ではそちらの方が真のハッピーエンドということになっています。

その2:セックスシーンに男性の発想が見え隠れ

セックスシーンはかなりよくできていると思ったのですが、それでも、「あ、これって男性の発想だ」と思ってしまうところがあって、そこがちょっと残念でした。

どこかと言うと、七海が「お姉さまの手つきは、女同士だけこその繊細さとツボを心得た動きだった」なんて考えているところ。これは少なくとも「男の愛撫の仕方はどんなものなのか」がわかっていて、さらに「女同士のセックスはイイらしい」というポルノチックな俗説を鵜呑みにしている人の言うことであって、処女(ですよね?)の七海にはありそうもない発想でしょう。

しかも、その「ツボを心得」ているはずのお姉さまの愛撫の描写が何故か時々「いかにもツボを心得てない男性がやりそうな触り方」になってしまっていて、にも関わらず七海がアハンウフン悶えてたりするので、なーんか男性がふたり「女の子ごっこ」をして絡み合っているのを見ているかのような微妙な印象を受けました。全体的にはかなりリアルだったり萌え萌えだったりするシチュエーションが多いので、そういう些細な点がすごくもったいないと思いました。

良かったところあれこれ

ガチ視点からの不満点を吹き飛ばすぐらい、良いところも多かったです。

キャラクタの目線に愛がある

可愛くて綺麗な絵柄そのものの魅力はいわずもがなですが、特筆すべきは、全編を通じてキャラクタの目線にちゃんと愛があることです。不自然に(←ここ重要)カメラのこちら側に目線を送って媚びたりせず、ちゃんと腕の中の恋人に愛しそうな視線を送っているのが本当に素晴らしかった。百合ジャンルでここまでラブい絵は貴重なので(ないわけではないのですが、やはり貴重)、思わず涙を流して「ありがたやありがたや」と拝まんばかりの心境になりました。

以前このへんでも書きましたが、いちゃいちゃしているはずの女の子たちが「やたらと(セックス中まで、とか)常に不自然なカメラ目線になっている」って構図の百合絵ほど萎えるもんはありません。そういう構図は「別にこの相手に惚れてるわけじゃありませーん」「傍観者に媚びを売ることの方が大事でーす」ってことであって、下手すりゃ3P突入の地雷だったりするからです。けれど、この『その花びらにくちづけを』にはそんな愛のない構図の絵は一枚たりとてなく、どこを取ってもキャッチコピー通り「らぶらぶ」で「百合ん百合ん」でした。

エロ絵のみならずいちゃラブ絵も豊富

「腕を組んでラブラブで下校」、「制服で両手をつないでキス」、「片方がもう片方の髪をとかしてあげる」(これはヌードだけど、エロ絵じゃなくてラブ絵だと思いました)などの、さりげない日常の中のいちゃいちゃシーンの一枚絵がたくさんあるのが嬉しかったです。

基本も全てばっちり

「男性キャラクタなし」「器具使用なし」「3Pなし」「ふたなりなし」、しかもレイプも陵辱もなく、当然ながら陳腐な「女子校ちんこ潜入もの」でもない……という、百合/レズゲー界の基本を全て押さえまくった作りになっています。「ここまでやれるものなのか!」とかえって驚いたぐらいです。「百合は売れないから~」とか言って安直にちんこ付き生物を絡ませちゃうメーカさんには、ちょっとはこれを見習って欲しいです。

まとめ

気になるところがないわけではありませんが、総合すれば「買って悔いなし」の作品でした。続編も楽しみです。