石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。

『まんがの作り方(3)』(平尾アウリ、徳間書店)感想

まんがの作り方 3 (リュウコミックス)

まんがの作り方 3 (リュウコミックス)

し、心臓に悪い……! でも、だからこそ面白い

駆け出し漫画家川口さん(19歳)と森下さん(18歳)の百合ラブストーリー、第3巻。今回のクライマックスは心臓に悪かった……! もともと、「不純な動機で森下と付き合い出した川口」と、「そんな川口を純粋に好いている森下」とのズレが痛々しくも面白い作品ではあるのですが、それでもこれはかなりの予想外。息詰まる思いを味わわせていただきました。もちろん、だからこそ、よりいっそう面白い巻だったわけですけど。物語にこうして手玉に取られるのって、疲れるけれど、とても楽しいです。政人や武田などのサブキャラも光っており、よく練られた1冊だと思います。

今回のクライマックスについて

上で書いた「クライマックス」とは、要するに帯にも書いてある、

……別れよう……

という台詞と、それに続くシークエンスのことです。帯を読んだ時点では、「いやいやきっとまたなんか脱力系の展開なんでしょ」とたかをくくっていたのに、蓋を開けてみたら意外とこれがヘビーで、びびりました。そこまでの話運びが、またうまいんですよ。手つなぎの使い方とかね。鹿を見ながらの会話の場面とかね。

で、そうやって周到に組み立てられたクライシスのケリのつけ方が、とても面白いんです。第8話(2巻収録)で張られた伏線を二重の意味で回収するという心憎いオチで、そこまでハラハラさせられた分、よけいにほっこりさせられてしまいました。第8話の時点ではてっきり単発ギャグだと思っていたのに、まさか、こう来るとは。飄々としたギャグ作品でありながら、実に侮れない漫画です。

政人くんと武田さんについて

報われない恋をけなげに貫く政人と、プラグマティズム一直線の武田がよいコントラストをなしていたと思います。こうしたサブキャラの視点を使って多方面から見ていくことで、メインカップルの恋路がより立体的なものとなっているのでは。

武田に関しては、今後もこの性格を貫くのか、それとも恋でもして変化していくのかが気になるところです。現時点での彼女は、高い技術力と内面の青さとが齟齬をきたしている状態にあるように思います。ひょっとしたらこのアンバランスさが、彼女がプロになれない理由のひとつなのかもしれません。だとしたらそれは『まんがの作り方』というタイトルともうっすらリンクしていることになりますし、いずれ何らかの形で彼女のエピソードを掘り下げてくれたら嬉しいなと思います。

その他

川口の初コミックス作業の描写が面白かったです。買う側は普段何気なく購入しているコミックスですが、作る側は表紙ひとつとってもプレッシャーや戦略が渦巻いているものなのですね。

まとめ

あたしにとっては1〜3巻のうちではこの3巻がもっともインパクト強かったです。クライマックスで極端にハラハラさせられつつも、とても楽しく読みました。独特のとぼけたギャグや、サブキャラを含めた各キャラの魅力もよかったです。というわけで、おすすめ。