石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

映画『恋のミニスカウエポン』感想

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キュートな恋を描く素敵なアクションコメディ

「B級スパイ・アクション映画と見せかけておいて、実は女のコ同士のロマンティック・コメディ」というとても楽しい作品です。低予算なだけあってアクションやプロットはすげー安い感じなのですが、この作品の魅力をそんなところに求めてはいけません。女のコ同士の恋愛をキュートに肯定的に描ききってみせた素敵なバカ映画(誉め言葉)なんですよこれは!

よかったところ

丁寧な恋愛描写

恋におちる女のコたちはかたや元々レズビアン、もうひとりはこれまで自覚のなかったレズビアンなんですが、前者が後者を口説くシーンがとても丁寧に作ってあって嬉しかったです。だっさいヘテロ視点(全部のヘテロがそうだとは言いませんが)で妄想した「レズビアンの妖しい魅力で美女を籠絡」とかじゃなくて、思春期恋愛らしく一生懸命相手の警戒心をほぐしながら仲良くなって距離を詰めていくところがきちんと描かれてるんですよ。

2人のデートシーンもすごくキュートでラブラブなのがよかったなー。レズビアン物というと肉体的な絡みばっかり期待されがちだけど、単なる同性間の行為なんてのは実はヘテロでもできることだから、それ自体はぜんぜん重要じゃないと思うんですよ。レズビアン映画において大事なのは、行為そのものよりもむしろ、気持ちの面の「大好き」感や「仲良し」感をどこまで表現できるかです。この映画は、その点において非常によくできていたと思います。あの「仲良し」感がもう、可愛くってまぶしくってたまりませんでした。

バカ映画(誉め言葉)的な設定の数々

「SATには実はスパイの資質を見抜くという目的があり、その結果選ばれた学生が秘密の準軍事学校『D.E.B.S』に入る」という設定がもう、胸を張って「バカ映画ですよ」と言ってるのと同じですよね。日本で言えば、センター試験を受けたら「スパイになりませんか?」とスカウトされた、というようなもの。しかも、スパイのはずのD.E.B.S.の制服はあの超ミニスカ女子高生ルック。この時点でもう、この映画にリアリティとか深刻なストーリーとかを求める方がアホだとわかります。張り込みや侵入でキャラたちが大真面目に使っているガジェットの数々がことごとくアホらしいのも楽しかったです。

キャラの描き分けがうまい

まずD.E.B.S.の4人ですが、社交的な優等生のエイミー(主役)、野心家でリーダータイプのマックス、イノセントでちょっとおバカなジャネット、セックスマニアでフランス訛りのドミニクなど、全員きっちりキャラが立っていることに感心しました。しかも、開始後たったの3分ぐらいでそれぞれの個性がはっきりわかるスピーディーな展開がいいですね。敵役のルーシー・ダイヤモンドやその相棒のスカッドもたくさんのアイディアをつぎこんで描写されており、共に魅力的でよかったです。

今いちだったところ

後半のストーリーの的が絞りきれていない感じがしました。エイミーとルーシーのつきあいに周囲が反対する理由の力点が「敵と付き合う」ことにあるのか、それとも「同性と付き合う」ことにあるのかが今ひとつはっきりしません。一応前者だってことになってるみたいですが、それにしてはマックスやボビーの言動が微妙に(あくまでも微妙に、ですけど)ホモフォビックだったりして、話の焦点がやや曖昧になってしまっていると思います。もっと思いっきりどっちかに振っちゃってもよかったんではないでしょうかね。たとえば未公開シーンのマックスとドミニク(デヴォン・アオキ、最高!)の会話、あれを入れてもっと極端な味つけをしても面白かったかも、と思います。

まとめ

多少のアラはありますが、「低予算でもここまでやれるぜ!」というB級映画の心意気を感じる快作です。バカ映画を愛してやまない人と、それから何よりも、思春期の女のコ同士のキュートな恋愛模様が見たい人におすすめ。