- 作者: CHI-RAN
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2006/09/16
- メディア: コミック
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ラブい上に、くだらない偏見はゼロ
こいつはラブいぜ! どうしてもっと早く読まなかったのかと後悔しました。
『少女美学』は、百合姉妹と百合姫に連載された短編6本に描き下ろし1本を加えた百合漫画集です。わりかし萌え絵っぽく見える表紙とタイトルへの警戒心(『必要以上に少女or同性愛を美化してたらヤダなー……』と思ってました)から長らく読まずにいたのですが、もっと早く買うべきでした。面白かったし、絵も上手だったし、何よりくだらない偏見が一切なくて、ガチな人にも共感できるお話が多いところがよかったです。
絵について
フタを開けてみたら全然萌え系なんかじゃなくて、むしろ少女漫画系のかっちりした綺麗な絵柄でした。やや硬質な輪郭線やきちんとした骨格の描き方は、たとえば松苗あけみあたりを思わせる感じだと思います。
内容について
ほぼすべての♀♀カップルがキスやセックスありの関係で、しかもリバだったりするところが嬉しかったです。女のコ同士の欲望を否定せず(なんと、好きなコのことを想っておそろいのセーターで自慰をするコまで出てきます)、しかもつまんないヘテロセックスの模倣に終わることもせず、ラブくて熱い関係をしっかり描いてくれていると感じました。
とはいえ、なんでもかんでもリアルなわけじゃなくて、ストーリーそのものにはわりとベタな少女漫画的設定(たとえば『憧れのティーンモデルの家に偶然同居することになり、いつしか恋人同士に!』とか)多いんですけどね。そこはそれ、「少女漫画なんだからいいんです」と割り切って読みましょう。
偏見の描き方について
これはすごくよかった。「彼女の誘惑」におけるカミングアウトについての考え方とか、「彼女の告白」内で主人公が「レズ」に対する偏見にさらされることをシミュレートして頭の中ぐるぐるんしちゃうところとか、とてもリアルでした。ちなみに「彼女の誘惑」の方には、同性愛だけでなくトランスに対する無知・偏見もさりげなく描かれています。どの話も、『Diamond9!』(いのうえこうじ、司書房)みたいにただ暴言や蔑視を描くだけ描いて終わるのではなく、最終的にはそれらが間違ったことだと読者に伝わるような展開になっているところがとてもよかったです。
まとめ
絵も内容も偏見の扱い方もマル。ところどころに少女漫画的なノリはありますが、ガチな人が読んでも安心して楽しめる良質の恋愛短編集だと思いました。えちくてラブくてハッピーエンドな百合漫画を読みたい方におすすめです。