石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『南波と海鈴(1)』(南方純、一迅社)感想

南波と海鈴 1巻 (1)  (IDコミックス 百合姫コミックス)

南波と海鈴 1巻 (1) (IDコミックス 百合姫コミックス)

ほのぼの友情百合漫画

猫耳少女「南波」(みなみ)とツンデレお嬢様「海鈴」(みすず)のほのぼの友情百合漫画。もっとも百合百合しいのが表紙(と、それをアレンジした内表紙)で、あとは概して非常にマイルドな表現になっています。が、いっつもいっつも濃厚な恋愛/性愛がらみの百合物ばっかり読む必要もないし、こういうのはこういうのでありかと。つまり、生クリームぐねぐねのケーキもいいけど、素朴な味のラムネ菓子もおいしいよ、ってことですね。

この作品の特徴は、直接的な恋愛要素こそ少ないものの、ほぼ全てのキャラに広く薄く(あくまで薄くですが)百合傾向があること。主人公ひとりが強烈に百合な人な『落下流水』(真田一輝、芳文社)や、メインカップルの2人以外は皆ヘテロな『Diamond9!』(いのうえこうじ、司書房)などとはまた違う、ユニークな物語構造だなと思いました。

『少女セクト』(玄鉄絢、コアマガジン)のようにもっとはっきりと恋愛や性愛の要素を打ち出した漫画であれば、出てくる女性キャラの大半がオンナノコスキーだというのはよくあると思うんですよ。が、マイルド路線でここまで広く浅くほのかに百合というのはレアなような気がします。そういう意味でも面白かったです。

キャラの中では、特にサブキャラのりなや二波、三波の個性の強さが光っていると思いました。3人とも美人で変人という点だけは共通していながら、「海鈴にマイペースに執着するりな」「重度のシスコン二波」「己のボーイッシュな魅力で『お得』を追求する三波」など、百合パワーの方向性が少しずつ違っているところが楽しいです。

まとめ

「薄くはあるけれど、広く浅くほのかに百合っぽい」というユニークな作品でした。マイルドな百合漫画をお探しの方におすすめです。