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近未来軍事SF(かすかに百合あり)
巨大生物群「剛粧」によって東西に分断された日本で、謎の敵「幽霊剛粧(ファンタズマ)」と戦う少女「敦樹」の物語。最初は軍隊、後に防災団と敦樹の戦うステージは変わっていきますが、少年少女の小隊がハイテク刀と多脚砲台で戦闘を繰り広げる群像劇という基本路線は変わりません。
シビアな戦闘描写と敦樹の朴訥なキャラクタもあいまって、全体の印象は「硬質な手ごたえのSF路線ラノベ」。ちょっとした軍隊っぽさが好きな人なら買いかも。ただし百合物としてはかなり薄口なので、そちらにあんまり期待すると肩すかしをくらうかも。
希少な百合部分は、たとえばこのへん。
- 銭湯で手をつないで湯につかる敦樹と佐里に南美のツッコミ「これだけ空いてるのに、女二人で並んでお湯に浸かっててさあ。しかも全然しゃべんないんだから。――雰囲気出し過ぎだよ、アンタたち」(1巻p. 196)
- 敦樹の健康管理について雪美が佐里に「夫の健康管理は、妻がしないと」(2巻p.51)
- 2巻での敦樹と佐里のハグ(p. 208)、そして敦樹の誓い(p. 304)
どれも友情ともとれる範囲の描写なので、これが百合かどうかは人によって解釈が分かれるかもしれません。恋愛っぽさが皆無でもOKな方なら、特に2巻は一見の価値ありだと思いますけど。
ひっかかったところなど
独特な用語感覚は、人を選ぶかも
とにかく用語が漢字だらけなラノベです。たとえば戦闘中の台詞ひとつとってもこんな感じ(1巻p. 74)。
「通達、摩擦変換推進、構造骨格機構、複層情報結合の使用要請」
「通達、調律打撃信管、可変空間装甲、複層情報結合の使用申請」
こういうのに対し「おお! かっこいい!」と思える人には向く小説。「戦闘中に何を悠長な。略語使えよ」と思ってしまう人には向かない小説だと思います。
ちょっと唐突すぎる箇所アリ
2巻のアイティオンの登場、唐突すぎません?
まとめ
萌えに寄りかからないハードな雰囲気が面白い作品でした。ただし百合小説としてはきわめて薄口であり、恋愛というより友情寄りのお話ととらえた方が良いと思います。漢字でみちみちの用語や、2巻の唐突な展開なども賛否が分かれるところかも。もしも続きが出るなら、読んでみたいところです。