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女のコから女のコへの、甘酸っぱい初恋ストーリー
主人公「まり」が親友「あっこ」に魅かれていく過程を優しく丁寧に追う百合漫画。1〜2巻を一気に読破したのですが、とても面白かったです! この作品の何がいいって、ガールズラブ云々以前に、まずヘアカットやプリクラ、爪磨きにボディバターにリップグロス等のいかにもな要素を巧みに配した「女のコの日常漫画」でもあるところ。このように可愛くキラキラした、だからこそかえってリアル感のある日常風景を綿密に描き出すことで、お話全体が地に足がついたものになっていると思うんですよ。ちなみにかんじんの恋愛要素の方も、「異性愛規範を妄信するがゆえのとまどい」よりも「初々しい初恋のとまどい」の方に力点が置かれていて、とてもよかったです。
1巻について
1巻では、真面目で内気なまりがあっこと知り合い、やがて親友になり、さらに親友以上の気持ちを抱くまでが描かれます。この巻で白眉なのは、なんといっても後半の急転直下の展開。そこまでの可愛らしくほほえましい「女のコの日常」風景との緩急のつけ方がたまりません。また、まりが自分の気持ちにうっすらと気づき始めるあたりでむやみに先を急がず、丁寧な描写を積み重ねていくところも素晴らしかったです。特にあの涙のシークエンス(p. 163)など、心は否認していても身体は嘘をつけないということをうまく使った心憎い演出だと思います。この先いったいどうなってしまうのかとドキドキしてしまうラストシーンもよかった!
2巻について
まりが「うっすら」ではなく「はっきりと」自分の恋心に気づく巻です。のっけからもう、1巻ラストのアレ(伏せます)に対するあっこの反応が心に刺さって切ないったらありゃしません。また、まりが自分の行動を
と振り返るところ(p. 143)なんかもいいですね。1巻の終わりからこの時点までの彼女の気持ちの変化を端的に表す、うまいモノローグだと思います。ちなみに単なる好き感情だけでなく、あっこへの欲望も徐々に自覚していくところなんかもナイスでした。そっか あの頃は… 気付いてなかったから あんな事できたんだな…
他に2巻に関してすごくいいなと思ったのが、まりの逡巡の理由として、いわゆる同性愛への禁忌がいちいち前面に押し出されないこと。それよりもむしろ、
という、初恋であるがゆえのとまどい(p. 90)がクローズアップされているところにほっとしました。いや、もちろん、「友達で 女の子で」(p. 107)あることへのためらいも描かれてはいるんですよ。でも、それはこの強制異性愛社会でなら誰だって一度は感じる範疇の、ごく妥当なもの。「禁断」「背徳」に興奮する一部の百合好きさんにへつらうような前時代的な同性愛嫌悪は、この作品にはありません。これはほんと、嬉しかったです。今まで恋したこともないくせに どうしてこれが恋だって思ったんだろう――
その他
上に挙げてきた以外で「すごい」と唸らされた点がもうひとつ。それは、女のコ同士のじゃれ合いや、萌えジャンルとしての「百合」をきちんとメタ視した上で、まりの恋愛をそれらとはまた違うものとして描いているところです。たとえば、酔った勢いでの
というシークエンス(2巻pp. 49 - 50)や、マリみてとウテナを足して2で割ったような百合同人誌(2巻p. 96)の場面など、ギャグとして面白いだけでなく、ありがちなじゃれ合いやフィクショナルな「百合」を相対化する役割を担っていると思うんですよ。こういった場面を織り込んだ上で、主人公の恋を明らかにそれらとは異なるものとして描いていくというのは、要するに「まりの想いは『じゃれ合い』でも『萌え萌えなファンタジー』でもなく、ガチですよ」という宣言ですよね。3巻によりいっそうの期待がかかりますな、これは。食える! 食えるよ! 私はたまみん食えるよ!
まとめ
しっかりと地に足がついた、甘酸っぱくもド直球のラブストーリーだと思います。キラキラした女子高生ワールドの描写もいいし、主人公の恋心をよくあるじゃれ合いや萌えネタとしての「百合」とはっきり区別しているところも素晴らしい。「あっこのターン」(2巻あとがきより)である3巻が、今からとても楽しみです。