- 作者: 南房秀久,島田フミカネ,上田梯子,Projekt K
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/03/01
- メディア: 文庫
- 購入: 3人 クリック: 7回
- この商品を含むブログ (23件) を見る
微百合度アップのキャラ萌え小説
空飛ぶ乙女兵士たちが謎の敵「ネウロイ」と闘うアニメ『ストライクウィッチーズ』のノベライゼーション第2巻。ひたすらキャラの顔見せに終始していた1巻『に比べればそれなりにストーリーもあり、「小説」の体をなしているかと思います。また、微百合風味がアップしているのも嬉しいところ。ただし、その微百合部分に一ヶ所妙にあざとい演出があるのと、相変わらずキャラが詰め込みすぎで、アニメを見ていないとどれが誰やらわかりにくいところは今ひとつ。「うっすら百合でうっすらストーリーのある、キャラ萌え小説」ととらえておくのが正確なところかと思います。
それなりにお話に起伏が
キャッキャウフフの短編アソートという形態は1巻と同じなのですが、後半でミーナの過去と内面がクローズアップされていき、ややショッキングなエピローグで3巻への引きを作って終わりという構成が面白かったです。海軍とのいざこざ及び少年の持っていた手紙など、まだ回収されていない伏線もあり、今後の展開が楽しみ。
微百合度もアップ、ただし、いらんあざとさあり
芳佳がシャーリーの胸を揉んだり(p. 38)、ペリーヌが浴場で美緒の裸を見たがったり(p. 125)するところなんかも百合っぽくはあるんですが、今回特筆すべきはエイラとサーニャのカップリング。特に、エイラが処々で見せるヤキモチ具合が可愛くてよかったです。たとえば、こんな(それぞれp. 77、pp. 85 - 86)。
芳佳は震える右手を顔の前に持ってきた。
「サーニャちゃんが手、つないでくれたら、きっと大丈夫だから」
「……あ」
サーニャは魔道針と頬っぺたをポッと赤く染めて、そっと芳佳の手を握る。
(こ、こいつ! 素で口説いてんのかああああっ!)
ムッとしたエイラは芳佳の左側に回り込んで、強引に左手を取った。
(サーニャと手をつなごうなんて、十年早い!)
「サーニャちゃんって、肌白いよね」
そのうなじから肩、背中にかけての線。
まるでマイセンの磁器のような透明感のある白さに、芳佳は見惚れてしまう。
「あ」
その視線に気がつくサーニャ。
「どこ見てんだ、お前!」
エイラは割り込んで芳佳をにらむ。
「いっつも黒い服着てるから、よけい目立つよね~」
「サーニャをそんな目で見んなあああああああ~っ!」
エイラの絶叫が、サウナの外にまで響き渡った。
他に、寝ぼけたサーニャが毎回半裸でエイラのベッドにもぐり込むインターミッション(計3話)も面白かったのですが、反面、その「半裸で添い寝」ネタがあざとい演出つきで口絵の客寄せエロに使われているところは興醒めでした。何すか、あのわざとらしくほどけた紐パンとか、絡めた腕とか。本文を読めばわかりますが、あの添い寝ってそういう意味合いはまったく無いはず。小説の内容と乖離したものを、しかもエロ本よろしく袋とじの口絵にして、それで客を釣ろうっていう魂胆が貧乏くさくてがっかりでした。よく見たらカバー裏にまで、
口絵は、サーニャ&エイラのマル秘シーンです♥
なんて書いてあって、これはもはや詐欺に近いんじゃないかと思います。そんなにエロで釣りたければ、いっそ小説内に「スオムスいらん子中隊シリーズ」のハルカ×智子並のシークエンスを用意してからにすればいいのに。
やっぱりキャラは詰め込みすぎ
1巻もそうですが、ページ数あたりのキャラの数が多すぎて、慣れるまではいちいち巻頭の一覧表で調べないとどれが誰やら頭に入っていきません。その手間さえ惜しまなければアニメ未視聴でもじゅうぶん楽しめる内容ではありますが、やっぱり基本的にはアニメ版のファンの方向けの「キャラ萌え小説」だと思います。
まとめ
1巻よりはストーリーに流れがあり、次巻に続きそうなネタも複数仕込んであって面白かったです。エイラとサーニャのカップリングもよかった。ただし、エロくもない作品をエロぶって売ろうとするセコさはいただけませんし、キャラの数が多すぎて、誰が誰だか把握しにくいところもマイナス。もっと微百合なら微百合、エロありならエロありと割り切った上で、1話あたりに登場させるキャラの人数を絞り込んでいけば、アニメ版のファン以外の購読者層も取り込める作品になるのではないかと思います。とりあえず前作より面白くなっていることは確かなので、今後の展開に期待です。