- 作者: 楠桂
- 出版社/メーカー: 少年画報社
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物足りないサイコサスペンス。微百合と言えば微百合
「通り魔」による暴行事件と殺人事件をめぐり、少女たちが次第に壊れていくサイコサスペンス。序盤で殺される少女「日向唯」に対して「桜井乙葉」がみせる愛と執着が微百合といえば微百合です。しかし、全体的に凄味を出そうとして空回りしてしまっている感があり、サイコものとしても百合ものとしても今ひとつかと。あとがきによるとこの物語は元々ホラーだったものが、「ホラー設定一切禁止」という事情により今のような形になったとのことですが、それでストーリーのインパクトが削られてしまったのかもしれません。
凄味がうすくて空回り
プレッシャーと恐怖から少女たちが次第に壊れていく過程が、怖くなりそうでその実ぜんぜんなってないと思うんです。理由は、少女たちの壊れ方があまりにも教科書的で、意外性に欠けるから。どの子も「過食症」「自傷癖」「先端恐怖症」「失語症」「せん妄」など、どこにでもある病気の紋切り型の症状を呈するのみで、読んでいて「次はたぶんこうなる」と見通しがついてしまうんです。サイコミステリーというよりむしろ「ストレス疾患による症例集」を読んでいるみたいで、フィクションらしいいきいきとした怖さはほとんど感じられませんでした。
人間にとってもっとも怖いのは「見えないもの」や「わけのわからないもの」ですから(典型例:「くねくね」)、もう少し不明瞭さというか得体の知れなさを残しておいた方が、お話により迫力が出たのではないかと思います。それとも、ひょっとしたらそういった心理面での恐怖も「ホラー設定一切禁止」に抵触するということで不可だったんでしょうか?
百合ものとしても今ひとつ
このお話を百合として分類するなら、「行き過ぎた執着から破滅的な方向に向かってしまうメンヘル系百合話」。しかし早々にネタが割れてしまう上に感情面での迫力に欠け、不完全燃焼感が残ります。愛憎にからむ狂気をもう少しねっちりと(あるいはじわじわと)描いた方が、オチがより生きたのでは。
まとめ
たとえて言うなら「コショウが足りないラーメン」。何かもう少しピリッとするものが欲しかったです。肉体的な暴力やありがちなストレス疾患を描くだけでなく、もう一歩踏み込んだ心理面でのえぐみや凄味が加味されていたらもっとよかったんじゃないかという気がします。百合話としても、愛憎のドロドロ部分にもう少し迫力が欲しかったかも。