疾走する思春期のパラベラム みんな大好きな戦争 (ファミ通文庫)
- 作者: 深見真,うなじ
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2010/04/30
- メディア: 文庫
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容赦なく人は殺され、物語は大詰めに
学園異能ガンアクションの第6巻。次巻が最終巻ということで、今回ついにデシケーターと人類との戦争が始まっています。1巻を読んだときには正直「深見作品にしては薄口かも」と感じたこのシリーズですが、この巻では相当容赦ないバイオレンスと死が用意されています。主要キャラが一瞬で命を奪われ、いちいち長ったらしい愁嘆場が用意されないというシビアさがよかったです。戦争の悲惨さって、そういうところにあると思いますし。
相変わらず女が好きな女も男が好きな男もあたりまえのようにいて、それでいて別に同性愛が話のメインテーマではないところもよかったです。これだけ百合もののレビューを書いている自分が言うのも変かもしれませんが、「同性愛=それだけで創作物のメインテーマに据えられるべき大事件」ってわけじゃ全然ないと思うので。同性相手の恋なんて、ただの日常ですよ日常。
聞いた話ですが、子犬にお留守番のしつけをするときに、留守番させた後で「おおよちよちお留守番大変だったねー、かわいちょうにねー!」なんて大騒ぎしながら誉めるのは逆効果なんですってね。飼い主が大仰に騒げば騒ぐほど、子犬には「お留守番は大変で、かわいそうなことなんだ」とインプットされてしまい、留守番を嫌がるようになるのだとか。人間が帰宅後いちいち犬相手に騒がず、「留守番なんて別にたいしたことない」という態度を取っていた方が、子犬は落ち着いて留守番できるようになるんだそうです。
それと同じ理屈で、創作作品でいちいち「同性同士ってこんなに大変なんだねー! かわいちょうにねー!」と興奮気味に騒がれるのは、ちょっと弊害多そうだとあたしは思っています。いや、そういう作品だってもちろんあっていいのですが、もっと淡々と「この人はこの人が好きですが何か?」というスタンスをとる作品もあってほしいと思うんです。その点、このパラベラムはとても安心して読めるなあと思いました。
まとめ
大詰めに向かって人がばんばん死にまくる、激しい巻でした。同性相手の恋をいちいち特別視しない筆致もナイス。疾走し続けるこのお話が7巻でいったいどのような結末を迎えるのか、楽しみです。