- 作者: 山田瑯
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/04/16
- メディア: コミック
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少女と少女のバディもの系中華ファンタジー
蓬莱を目指す少女ふたりの中華ファンタジー。王女とその従者のゾンビ少女という取り合わせが面白いし、荒削りながらも目指すものがぐいぐいと伝わってくる絵柄も魅力的です。百合というよりバディもの・友情もの寄りの作品ではありますが、守り守られるふたりの関係もよかった。
百合というよりバディもの
とは言ってもなかなかに熱いんですよこのふたりの絆が。それは主人公「鈴哥(りんか)」の、
というあっけらかんとした台詞(pp. 54 - 55)にも見て取れますし、鈴哥と陽々の出会いの場面にも顕著です。別に恋愛チックな盛り上がりがなくても、個人的にはこれだけでごはんが三杯。少年漫画的なカラリとした仲の良さがかえって心地よく、楽しく読めました。陽々(ヤンヤン)も一緒に行くに決まってんじゃん
(引用者中略)
陽はあたしのたった一人の家族だ
絵柄について
デビュー単行本だけあって、描き慣れていない雰囲気がないと言ったら嘘になります。けれどもこの絵柄、荒削りながらも「この絵で伝えたい世界観」というものがダイレクトに伝わってくる感じなんですよ。独特の遠近のつけ方、ホラーな場面の描き込み方、キャラクタの表情などから、「この作品でこれをやりたいんだ」というイメージがビシバシと伝わってきます。小器用にまとまった絵柄より、個人的にはこういう勢いのある描き方の方が好き。今後もこの路線で思いっきり突っ走ってほしいと思います。
ストーリーについて
オーソドックスなロードムービー的展開の中で、スパイスとしてのおどろおどろしさやペーソスがいい味を出しています。鈴哥が殺されることになっていた理由が明かされる場面など、ゾクゾクさせられました。
こういったジャンルって、実はけっこう難しいと思うんです。「おどろおどろしくも熱い少年漫画」という分野では既に藤田和日郎がいますし、死体を蘇らせる秘術というのも、メアリー・シェリー(『フランケンシュタイン』)から高橋留美子(『人魚シリーズ』)まで書き尽くされていますしね。その点、この巻では、鈴哥の父の狂気をのぞかせることで、新たな恐怖の演出に成功しているのではないかと。2巻以降もとても楽しみです。
まとめ
新人さんらしい荒削り感はあるものの、とても面白く読みました。少女と少女のバディな関係も良いし、ホラーテイストな部分にもゾクゾクさせられます。ひたすら百合ん百合んな漫画をお探しの方には向かないかもしれませんが、生きのいいアクションファンタジーが読みたい人には大変おすすめです。