石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

92歳の米トランスジェンダー未亡人、社会保障局と戦い遺族給付金を勝ち取る

Social Security Card - Illustration
Social Security Card - Illustration / DonkeyHotey

米国の92歳のトランスジェンダー女性ロビナ・アスティ(Robina Asti)さんが、彼女が亡き夫の配偶者であったことを認めようとしない社会保障局と戦い、ついに遺族給付金を手にしたそうです。

詳細は以下。

92-Year-Old Trans Widow Wins Social Security Battle | Advocate.com

アスティさんは第二次世界大戦の帰還兵。1976年に性別移行して法的にも女性となり、社会保障カードや運転免許証、パイロット免許証、パスポートなどの公的書類の記載も、全部「女性」に変えました。2004年には、ノーウッド・パットン(Norwood Patton)さんという男性と結婚もしました。ところがそのノーウッドさんが2012年に亡くなり、アスティさんが社会保障局に遺族給付金の申請をしたところ、彼女が結婚時には「法的に男性であった」として給付を拒否されてしまったのだそうです。

そこでLGBTの権利団体ラムダ・リーガルが社会保障局に対し、アスティさんは女性であり、他のあらゆるシスジェンダー女性と同じ給付を受ける権利があるとして抗議。さらに、この1件を世に知らせるべく、こんな動画も製作しました。

"Flyng Solo"(『単独飛行』)というタイトルといい、ノーウッドさんとのなれそめのあたりといい、涙出るわホント。英語字幕がついているので、リスニングが苦手な方にもおすすめです。

ちなみに遺族給付が受けられるかどうかで、アスティさんが月々受け取る社会保障給付の額が500ドル、つまり約5万円変わってくるんだそうですよ。これは大きいよ、泣き寝入りできる額じゃない。

その後、2014年の2月初頭、つまり最初に給付の申請をしてから約2年経って、ようやくアスティさんの口座に社会保障局からお金が振り込まれたとのこと。

「お金が口座に入っているのを見て、とても嬉しかったです」とアスティはラムダ・リーガルを通じて述べた。「まるで夫のノーウッドからのバレンタインの贈り物のように感じました。社会保障局がとうとう目を覚ましてくれて、嬉しく思います。これで他の人たちがこんなことを経験せずに済むようになればいいですね」

"When I saw that the money was in my account, I was so happy," Asti said through Lambda Legal. "I felt like it was my husband Norwood's Valentine's Day gift to me. I'm glad that Social Security finally came to its senses. I hope this means that other people won't have to experience this."

ほんとに、これ以上こんな目に遭う人を見たくないですね。最終的に給付が認められたとは言え、90代の2年間は大きいと思いますし。待ってる間に死んじゃったらどうすんのよ。

思うんだけど、まず第一に「結婚は男性と女性がするもの」という前提自体を見直しちゃえばいんじゃない? 「(合意に達した、結婚可能年齢の)人と人とがするもの」としてしまえばこんなややこしいことにはならないし、LGBもなりたければパートナーの遺族になれるし、それでシスヘテロが何ひとつ損するわけでもないし。おおかたの身分証明書やら申込書やらもそうだけど、不必要なものにまでなんでもかんでも性別条項を付けまくるのをやめれば、世の中はもうちょっと住みやすくなるんじゃないでしょうかね。