石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

直接会って話すだけ。ゲイと話すならなおよし。アンチゲイな人の意見は変わる(米研究)(追記2件あり)

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同性婚を支持する人と直接会って話すだけで、同性婚反対派の人が賛成派へと変わり得るという研究結果が発表されました。この変化は持続的なもので、話す相手が同性愛者と名乗っているときの方が起こりやすかったとのこと。

詳細は以下。

Just Talking About Same-Sex Marriage With Anti-Gay Voters Can Shift Opinions, Study Shows

この研究をおこなったのは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校政治学博士課程在籍のMichael J. LaCour氏と、コロンビア大学政治学教授のDonald P. Green氏。両氏は、カリフォルニア州ロサンゼルス郡在住の有権者で、同州の同性婚禁止法案に賛成していた9507人について、2ヶ月半にわたって調査したとのこと。

調査方法は以下の通り。

  • 少なくとも2人の有権者がいる世帯を、ランダムに5つのグループに分ける。
  • グループごとに、以下の操作をおこなう。
    • 第1グループ:同性愛者の選挙運動員が、同性婚に関する話をする。
    • 第2グループ:異性愛者の選挙運動員が、同性婚に関する話をする。
    • 第3グループ:同性愛者の選挙運動員(ただし、性的指向は明かさない)が、リサイクルに関する話をする。
    • 第4グループ:異性愛者の選挙運動員が、リサイクルに関する話をする。
    • 第5グループ:何もしない(対照群)

なお選挙運動員は1世帯につきひとりの有権者だけと話し、話す内容は事前に決められた脚本通りにするよう義務づけられていたとのこと。

結果として、同性愛者と名乗る人から同性婚に関する話を聞いたグループがもっとも同性婚に賛成するようになり、しかもその変化が長続きしたのだそうです。興味深いのは、その効果は、同じ世帯に住んでいて選挙運動員から直接話を聞かなかった人にまで及んでいたということ。

「同居人たちは選挙運動のメッセージを直接受け取らなかったが、エビデンスは彼らが間接的に影響されたことを示している」とこの研究は結論づけている。「同居人が同性愛者の選挙運動員と同性婚について話した人々は……2度目の調査時には、同性婚を支持する点数が0.21上がっていた」

“Although housemates did not receive the canvassing message directly, the evidence suggests that they were influenced by secondhand exposure to the treatment,” the study concluded. “Those whose housemates conversed with gay canvassers about same-sex marriage ... became 0.21 scale points more supportive of same-sex marriage in wave 2."

おもしろいですねえ。「どこか遠くにいる、知らない人の問題」だったことに生きた人間の顔がついたことで、考え方が変わりやすくなったのでしょうか。ひとりの意見が変わると、同じ家に住む人の意見まで変わるというのも興味深いです。これもやっぱり、話題への距離感が縮まったからでは?

差別に関して何か言うと「声を上げるとかえって差別がひどくなる。黙って時代の変化を待つべき」なんてことを言う人がいますが、こうしてみると必ずしもそうとは言えないみたいですね。少なくともこの研究結果を見るかぎり、黙っているより直接顔を合わせて話したほうが、偏見は減るみたいですから。

2015年5月22日追記

2015年5月19日、スタンフォード大のDavid Broockman助教授、カリフォルニア大バークリー校の大学院生Joshua Kalla氏、そしてイェール大のPeter Aronow助教授が、この研究は論文の主張通りに集めたデータセットを使っていない不正なものであるとする指摘を発表しました。詳しくは以下を。

LaCour氏は米ハフポストのインタビュー申し込みを断り、メールで「1度で包括的な対応ができるよう、証拠と関連情報を集めている。できるだけ早く対応する」と述べているとのこと。

2015年6月1日追記

2015年5月26日、Michael LaCour氏はBuzzFeed等に送った文書で、研究のデータを操作したことと、研究費について偽りの表記をしたことを認めたとのこと。いまやLaCour氏のみならず彼の指導者の責任も問われる事態となっており、なにやらオボカタさんのSTAP細胞騒動めいてきました。

すごく怖いのが、先日のアイルランドの同性婚法制化をめぐる国民投票に際し、YESキャンペーン(婚姻の平等に賛成票を投じようと呼びかけるキャンペーン)陣営がLaCour氏の研究をもとにして戦略を組み立てていたということ。結果として下馬評通りYESが多数派(約60%)だったからよかったようなものの、これ、1票を争うような接戦だったらけっこう危ない橋だったのでは……?