石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『咲-Saki-(8)』(小林立、 スクウェア・エニックス)感想

咲-Saki- 8巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)

全国大会突入。友情、努力、そして成長

麻雀百合漫画、第8巻。4校合同合宿の後半から、全国大会第2戦先鋒戦の途中まで。キャラたちが友情を深めつつ成長する王道展開の中、百合では桃子&ゆみのバカップルと、意外なところで福与アナウンサー&小鍛治プロが健闘中。エロがあざといのが玉に瑕か。

友情・努力・成長

報道陣から長野県のレベルを軽んじられた優希が、予選で戦ってきた面々の顔を思い浮かべながら

なんだか…
みんなをバカにされたみたいだじぇ…

と静かな怒りに燃える場面(p. 148)がぐっときました。これだけでも名シーンなのですが、ポイントはその後の彼女の戦いっぷり。合宿で純や衣から吸収したことがひとつひとつ生かされ、県予選時より一段上の強さを見せつけてるんです。合同合宿が単なるファンサービス用の美少女浴衣温泉麻雀大会ではなく、友情と成長のステージでもあったことがよくわかる、痛快な展開でした。

優希以外でもさまざまなキャラ同士の心の交流がこまやかに描かれていたと思います。特に津山睦月と文堂星夏の友情など、小道具を使った演出が冴えていて心憎かったです。

今回の百合について

7巻に比べれば控え目なものの、桃子とゆみは順当なバカップルぶりを発揮しています。特に桃子の嫉妬がいちいちかわいかった。あんなに目立たないキャラなのに、ガラス窓にへばりつく表情だけで愛の深さが伝わってくるところがなんとも。あとは、大会実況のアナウンサー・福与恒子と麻雀プロ・小鍛治健夜のサイドストーリー「ふくよかにすこやかに」が意外な掘り出し物でした。あれを百合ととるのは深読みのしすぎかも知れませんが、

  • 休日にいきなり家に押しかけられる仲で、
  • 健夜は彼氏がいたことがないらしく、
  • 健夜が恒子宅に泊まるのは当たり前で、
  • しかもなれそめがアレ

……という時点でもう深読みが歓迎されているとしか思えません。ビバ大人百合。

あざとさがやや目立つかも

上の方で、合宿は「単なるファンサービス用の美少女浴衣温泉麻雀大会」ではなかったと描きました。しかしながら、清澄の一行が東京の宿舎に着いてからは、おそらくはファンサービス用だと思われる相当あざといショットも出てきます。あんな入浴シーン、ノンケ男の妄想の中にしか存在しねえよ。栗の花くせーよ。もともときわどい描写が目立つ漫画ではありますが、今回のそれはちょっと個人的キャパシティをオーバーしてしまい、げんなりしました。

米ABCファミリーのレズビアンドラマ『The Fosters』に、キャラのひとりがレズビアンポルノを評して言うこんな台詞があるんですよ。

ピンヒールをはいてるノンケ女性ふたりが男のために絡んでみせている姿ほど萎えるものはないわ。

No bigger turn off than two straight girls in stilettos pretending, for men, that they're hot for each other.

この伝で言うなら、「体を隠しもしない女子キャラたちがヘテロ男性読者のために風呂場でじゃれ合ってみせている姿ほど萎えるものはないわ」ってところですね。大丈夫な人は大丈夫なんでしょうが、あたしはダメでした。

まとめ

合宿による友情の深まりや優希の成長ぶりに説得力があり、構成の確かさを感じます。百合もなかなか。ただし、一部にシスヘテ男性向けの安手のソフトポルノ的なあざとさがある点は引っかかりました。今後こういう栗の花臭い演出があんまり出て来ないようだといいんですが。

咲 Saki (8) (ヤングガンガンコミックス)

咲 Saki (8) (ヤングガンガンコミックス)