オカルト控え目ながら読み応えあり
美少女麻雀漫画、第12巻。全国大会準決勝の先鋒・次鋒戦まで。超能力ではなく戦略や心理の読み合いで戦う展開で、かえって新鮮。ビジュアル表現の派手さ・楽しさは健在だし、キャラたちの成長もうかがえ、読み応えある巻でした。ちなみに今回、百合はなし。
これって麻雀漫画だったんだ……!
異能要素ほぼ無しでのスリリングな闘牌描写に、今さらながら「これって麻雀漫画だったんだ。異世界超能力バトル(だけの)漫画じゃなかったんだ」と目からうろこが落ちました。オカルト要素をせいぜい上重漫の「789の牌が来やすい」という程度にまで抑えても、キャラたちの作戦や麻雀スタイル、駆け引きだけでじゅうぶん読ませるんですもん。漫と智葉の勝負を「爆発VS居合抜き」という見開き一枚絵のイメージ映像でドカンと見せるなど、ハッタリの効いた演出もよかったです。
キャラの成長いろいろ
先鋒の優希も次鋒のまこも、それぞれ打ち方に変化と成長がうかがえます。その背後に久のアドバイスがあるあたり、やっぱり久はこの物語の「賢者」役なんですね。決勝戦を見据えた久の作戦が、この後和や咲にはどう影響してくるのかも楽しみ。
その他
今回、百合はほとんどありません。オカルトも百合もなしでこの読み応え、という点から、今東光大僧正が紹介していた宮本武蔵のエピソードを思い出しました。以下、『続 極道辻説法』(集英社)p. 221より引用。
「武蔵がいくら強くても、腕力はたかが知れている。あれはいつも知恵才覚で勝ってきている」というようなことをある武士が言った。それを聞いた武蔵は、「じゃあその武士を呼んで下さい」と言って、庭の青竹を何本か切らせておいて、それを武士に持たせた。「試合するんじゃない。その竹で素振りをしてみろ」。そこで武蔵の前でヒュッ、ヒュッと何本か振った。武蔵はジーッと見てニヤニヤ笑っている。「よろしい。よく見ておけ。俺は片手だぞ」と言ってビュッ、ビュッと振っていたら、青竹がササラのようになったっていうんだな。片手で振り下ろす瞬発力と風圧とで。これほど腕力があるのに、武蔵はそれに頼らず、術を身につけてやってきたという教訓だね。
この12巻というのは、武蔵が言うところの「俺は片手だぞ」なんじゃないかと。突飛な設定なしでも読者を楽しませる力があるのに、それだけに頼らず、前人未踏のジャンルを切り開いてきた漫画なのだということがよくわかる1冊だと思います。
まとめ
オカルトも百合もないといういわば飛車角落ち状態でありながら、単純に美少女麻雀漫画として面白い巻でした。こういうのもありかと感心。今後もこの路線が続くのか、それともまた何か破天荒なことをやらかしてくれるのかと気になっています。
- 作者: 小林立
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2013/12/25
- メディア: コミック
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