石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

台湾の歌手、鄭宜農(Enno Cheng)が離婚発表&カミングアウト

台湾の歌手で女優の鄭宜農(Enno Cheng)が2015年1月3日、Facebookの投稿でパンクバンドFire EX (滅火器)のSam Yang(楊大正) との離婚を発表し、レズビアンとしてカミングアウトしました。

詳細は以下。

Taiwan musician Enno Cheng announces divorce, comes out as lesbian - Gay Star News

鄭宜農と楊大正は9年間にわたる付き合いで、結婚したのは2013年のこと。しかしながら、2015年の年末に、ふたりは離婚したのだそうです。理由は、鄭宜農が「女性の身体が好きだから」。Google翻訳とエキサイト翻訳とPin Pin Chinese English Dictionary の力を借りてどうにか日本語化してみると、こんな感じかな?

9年近くつきあって、わたしは大正の魂をとても深く愛しています。大正にはとてもすばらしい心があり、わたしのことを無条件に理解して受け入れてくれていて、今日までこれっぽっちも変化はありません。しかしわたし自身は、絶えず自己認識の中でもがいていました。わたしたちはここ数ヶ月間何度も何度も意思疎通して、わたしが彼の身体を愛せないということを受け入れました。実際のところ、彼のせいではありません(言うのは恥ずかしいのですが、彼はいい身体をしてるんですよ、本当に!)、わたしが、女性の身体が好きなんです

交往近九年的時間,我一直深深愛著大正的靈魂。大正有一顆很棒的心,並對我無條件理解與包容,這點一直到今天都沒有改變。但我自己卻不斷在自我認知中掙扎著,經過這幾個月反覆溝通,我們還是一起接受了”我沒有辦法愛他的身體“這個事實,這不是他的錯(說來害羞,但他的身體很好,真的!),而是因為我喜歡的,是女生的身體

鄭宜農の性的指向は子どもの頃からとてもあいまいで、いつも女性っぽさと男性っぽさの両方を合わせ持つ女性に惹かれていたとのこと。しかしながら台湾の社会ではそういうタイプは非常にまれで、自分が何を望んでいるのかはっきりと認識することができなかったのだそうです。楊大正とは別れても親友だとのことで、上記ポストの結びでは「親愛なる人生のパートナー、未来も一緒にがんばりましょう!!」と呼びかけています。Gay Star Newsによれば、楊大正の方もFacebookで「宜農が本当の自分自身でいる権利を永遠に支持する」と書いているとのこと。

なお、Gay Star Newsの記述とはうらはらに、本人によるFacebookの文章では一度も「レズビアン」「同性愛」などの単語は使われていないようです。だから厳密に言うと、既存の「レズビアン」というカテゴリーとはまた違う自己認識なのかもしれません。それでもなお、この異性の身体に対する違和感というのは、いちレズビアンの自分から見て非常に想像しやすい気がします。そうなんだよね、相手がいい人かどうかとか、一般的な審美基準から言っていい身体かどうかとかは関係ないんだよねー。

なお中国語圏の報道をざっと見た結果、このカミングアウトには賛否両論あるようです。しかし 蘋果日報によれば、鄭宜農への批判を見た楊大正はすかさずFacebookに「自分には本当に恨み(憎しみ)はない、宜農はずっと俺のことを好きになろうと努力してくれていて、おかげでとても美しい9年間だった、奇怪な論理を使って彼女を攻撃するなら俺は必ず(以下、過激な言葉が入るので翻訳自粛)!」というポストを投稿しているとのこと。本人たちがここまで言っているのに外野がこれ以上ギャーギャー騒ぐなら、それはただのヘテロノーマテイヴィティーですわな。それに第一、カップルが別れる理由なんてカップルの数だけあるのに、それがたまたま性的指向だったという理由で第三者がいちいち取り乱したり怒ったりするのはアホの極み。鄭宜農にも楊大正にも、雑音を気にせず「未来も一緒にがんばって」行ってほしいと思います。