米ペンシルバニア州の元高校教員が、ゲイ男性の親友について生徒たちに話したために辞職を余儀なくされたと主張しています。学校側はこの教員とゲイ友との関係を詮索し、生徒をひとりひとり呼び出して、彼女の私生活について聞き出そうとしたのだそうです。
詳細は以下。
A Community Outraged After Teacher Resigned Because School Asked Kids About Her Gay Bestie
この元教員、Winden Roweさんは、同州ケネット・スクエアにあるユニオンヴィル・ハイスクール(Unionville High School)で働いていました。彼女のFacebookポストによれば、同性愛者の親友とベガスに旅行に行った話を生徒たちにしたところ、学校側はこんな行動に出たのだそうです。
- 授業中に生徒をひとりずつ呼び出し、Roweさんの私生活について尋ねる。質問には、「Rowe先生には同性愛者の親友がいるかどうか」「そのことについて生徒たちに話したかどうか」も含まれていた
- Roweさんに対し直接、(1)同性愛者の親友がいるか、(2)週末にその親友と一緒に夕食を取るのか、(3)休日はその親友と一緒に過ごすのか、など根掘り葉掘り質問
Roweさんによれば、学校側の言い分はRoweさんが「授業の時間を無駄にした」というもので、これらの質問の後で彼女は2日間休職させられたのだそうです。直接的には辞めろとも解雇だとも言われなかったものの、Roweさんは結局この職を辞しました。
Roweさんがゲイの親友のことを生徒たちに話したのは、まずRoweさんとその親友が一緒にいるところを見かけた生徒たちから彼氏彼女の関係だと誤解されたため、事実を明らかにしておきたかったから。それからもうひとつ、こんな大切な理由が。
わたしは自分の教え子たちに、わたしは学校でもコミュニティでもアライ(訳注:性的マイノリティの仲間/支持者/協力者のこと)だということを知ってほしかったのです。そして、わたしたちの文化の中にはいまだにゲイやレズビアンやトランスジェンダーの人たちに対する差別があり、それはまったく恥ずかしいことだということを知ってほしかったのです。わたしの友達で、同性同士の恋愛関係にある人は、唾を吐きかけられたり、蹴られたり、いじめられたり、物を投げつけられたりしたことがあります……ただ単に、誰を愛するかということだけが理由で。そして、わたしの勤務していた学校でも、クエスチョニング(訳注:自分自身のセクシュアリティを決められない・わからない、または、あえて決めない人のこと)の生徒たちが同じ目に遭っていました。わたしはその生徒たちに、わたしのところに来ればいい、支援を求める手助けをするよと知らせたかったのです。
I wanted the students that I work with to know that I position myself as an ally in the school and in the community and that there still lies in our culture a racism against our gay, lesbian, and transgendered community that is downright shameful. I have friends in same-sex relationships that have been spit on, kicked, bullied and have had things thrown at them....because of who they love. And it happens to questioning students in the school where I worked. I wanted them to know that they could come to me and that I would help refer them for services.
いい先生じゃないですか。このような目的でゲイの友人について話をすることが「授業時間の無駄」だとはまったく思えませんし、なぜこんな先生が辞めなければならないのか、理解できません。
Roweさんから相談を受けたスティーヴン・プランザー(Stephen Planzer)弁護士は、この一件が持つ「萎縮効果」についてこう語っています。
「学校当局の反応や、彼女に対する不当な取扱いから言って、有給の休職だったとは言えあれはやはり一種の処罰でした」とプランザーは言った。「その処罰が、米憲法修正第1条で保障されている彼女の権利を萎縮させ、同性愛について、またはゲイの友人がいることについて話すことができないようにしました。彼女は教室でこれらのことについて言及したために、罰を与えられていたのです」"Because of how they reacted, because of how they punished her, even though it was a paid administrative leave, it was still kind of a punishment," Planzer said. "It chilled her first amendment rights, it made her unable to speak about homosexuals or having a gay friend. She was being punished for having mentioned those things in the classroom."
一方、この学校のあるユニオンヴィル=
チャッズ・フォード学校区のデイヴ・リストマン(Dave Listman)広報コーディネーターの見解では、同学校区は「完全に包括的な組織体」であり、Roweさんの訴えは「濡れ衣」だとのこと。
第三者の目から見ればすべてが藪の中で、なんとも判断できませんが、もしRoweさんの主張がすべて事実だったとしたら生徒たちへの悪影響がとても心配です。「学校で同性愛にまつわることを口にしたら最後、根掘り葉掘り取り調べされて、2日も休まされて、あげく学校に居られなくなってしまう」なんてことを目撃させるのは、性的マイノリティの子どもたちにとってこの上なく否定的なメッセージとして機能してしまうのでは。マイノリティはいつでもマジョリティから沈黙を要求または期待されているものですが、ことばで「黙れ」と言われるより、非言語の形で「喋るとこうなる」と見せつけられることの方が、はるかに心理的ダメージが大きいと思います。本当にこの告発が全部「濡れ衣」だったら、どんなに素晴らしいことか。
なおRoweさん本人は戦って職を取り戻す予定はないと語っており、つまり訴訟は起こさないようなので、この先真相が究明されるかどうかは謎に包まれています。このSNS全盛の時代、生徒たちによる内部告発のひとつやふたつ出て来ないものかしら?