昨年10月に同性愛者であることを公表した米国の五輪スキー選手、ガス・ケンワージー(Gus Kenworthy)が、カミングアウト後の1年間を振り返る手記をInstagramに上げています。
明快で胸を突く、いい文章ですね。ケンワージー選手はまず、昨年スポーツ誌でこの写真とともにカミングアウトしたこと、当日はもう自分を隠さないで済むようになると思ってわくわくしたけれど、同時に友人やファンやスポンサーを失うのではないかと恐れてもいたことなどについて述べてから、実際にはこの1年間で得たものはとても多かったと述べています。そこからのくだりがとてもよかったので、ざっくり訳してみました。
ぼくは自分を愛し始めた。思春期を自己卑下の中で過ごした人間にとっては、大きな進歩だ。生涯の友ができ、恋をし、想像もつかなかったぐらい正直で幸せだと感じた。
ぼくは自分自身が恋人の手を握って街を歩きながら、誇らしさでいっぱいになるところをこの目で見た。もう、恐怖のために手をポケットにつっこみ、愛する人がただの友人や単なる知人だというふりをしながら歩かなければならないなんてことはないのだ。
何の負担もなくスキーができるようになり、おかげで、過去最高の競争力でシーズンを戦うことができた。そして競技のときには、ついに、ハーフパイプのボトムでぼくを応援しながら立っているボーイフレンドに挨拶を送れるようになった。それまでの5年間、関係を隠していた間には、残念ながらできなかったことだ。
大事なことだが、ぼくは人生で初めて自由だと感じ始めた。すべての人が毎日感じてしかるべきことだ! 去年のあいだぼくを支援してくれた人々にはどんなに感謝してもしきれない。ぼくにとっては本当に大切なことだった。
I’ve started to love myself, a big step for someone who spent their adolescence in self-contempt. I’ve made lifelong friends, fallen in love and felt truer and happier than I ever imagined.
I’ve witnessed myself swell with pride while holding my guy’s hand walking down the street; no longer dictated by fear to walk with my hands in my pockets acting like the person I loved was merely a friend, an acquaintance.
I got to ski completely unencumbered and ended up having my best competitive season ever because of it. And while competing I got to, finally, acknowledge my boyfriend standing at the bottom of the half-pipe cheering me on; something I regrettably failed to do in my previous 5-year-long closeted relationship.
Ultimately, for the first time in my life, I got to feel free – something everybody should feel every day! I can’t thank you all enough for the support you’ve given me over the last year, it truly means the world to me.
よかったねえ、本当に。
同性愛者がカミングアウトするたびに「どうしてそんなプライベートなことを『わざわざ』公表するんだ」というような疑問を呈する人というのは一定数います。「個人の『セックスの好み』をいちいち口にするな」など不快感をあらわにする人も。でも、全部見当違いなんだよね、ああいうの。たいていの場合において、公的な場でカミングアウトするっていうのは、まさしくケンワージー選手が言ってるようなことのためでしょ。つまり、自分や自分の愛する人との関係を「隠すべきもの」として卑下したり、恐怖のために常にヘテロのふりをし続けたり、そのせいで本来すべきことに全力を注げなくなったりするのをやめるってことです。こちとら役者でもないのに(いや、たとえ役者を仕事としていたとしても)、どっかのヘテロに押し付けられた「人間は皆ヘテロである」テーマのシナリオに合わせていつまでも無料で演技し続けてあげる義理はないし、その演技のために気力体力をすり減らされるのは、本っ当に無駄のひとことですからね。ケンワージー選手もInstagramの文末で書いている通り、(カミングアウトに)否定的な人がいなくなることはおそらくないのでしょうが、それでも彼の判断は正しかったとあたしは思っています。