University of Delaware Campus - Mitchell Hall / mathplourde
差別主義者として有名な米国の編集者、マイロ・ヤノポロス氏がデラウェア大学を訪れ、トランスフォビアを扇動しました。同大学の学生たちは一日中看板を掲げて同氏のヘイトスピーチに反対し、トランス・コミュニティへの支持を訴えたとのこと。
詳細は以下。
Students stand in solidarity with the university’s transgender community – The Review
マイロ・ヤノポロス(Milo Yiannopoulos、『ヤノプルス』との表記もあり)氏はイギリス出身の保守派ジャーナリストで、ゲイ男性です。ミソジニーとトランスフォビアと人種差別主義で悪名高い彼はまたインターネット荒らしでもあり、最近黒人コメディエンヌ/女優のレスリー・ジョーンズ(Leslie Jones)への中傷を扇動したとしてTwitterから利用を禁止されたことは、日本でも大きく報道されました。
そのマイロ・ヤノポロスが全米を回って演説する「危険なオカマツアー(Dangerous Faggot Tour)」なるイベントの会場のひとつが、デラウェア大学だったんでした。当日の演説で彼は「トランスジェンダーの人々は、人から注目されたがっているゲイ男性なのだ」というかねてよりの偏見を開陳したとのことですが、演説どころか、キャンパスの周囲に事前に貼られたイベント告知チラシからしてもうこんなだった模様。これじゃ付近の住民にも大迷惑だろ……!
Posters advertising Milo Yiannopoulos' event tonight in Mitchell Hall have been taken down by university police.#UDel pic.twitter.com/KWygXb3PCe
— The Review (@udreview) 2016年10月24日
University of Delaware everybody!! Where bigots like Milo Yiannopoulos are allowed a platform & hate speech is posted on our buildings!! pic.twitter.com/bymGZxGlLL
— moose (@almazapatista) 2016年10月24日
チラシの英文を訳しておくと、ミシェル・オバマ(Michelle Obama)とケイトリン・ジェナー(Caitlyn Jenner)の顔写真の上に大書されているのは「トラニー(トランスジェンダーの人々への罵倒語)はゲイ」ということば。もうひとつの文字だけのチラシには「トランスジェンダー=精神の病気」と書かれています。黒人と女性とトランスジェンダーの人々への憎悪を佃煮にしたかのようなこれらのチラシは、ニューアーク警察署の指示により、大学内の警察が撤去したとのこと。
ヤノポロスのスピーチは10月24日夜に実施され、これに反対する学内の有志が開催した抗議イベント「ユニティー・フェア(“Unity Fair”)」には約250人もの人々が集まりました。一方、大学当局はヤノポロスのトークについて沈黙を保っていたのだそうで、学生からは「学校が安全だと思えない」「デラウェア大学はトランスジェンダーの人々の安全や福祉を尊重していないのでは」との声も出ています。そこで10月26日、トランスジェンダーのコミュニティとそのアライが、まさにヤノポロスがイベントで使用したホールの前で「トランスの学生を守れ」と一日中訴えかけるキャンペーンを実施することになったのだそうです。
当日の様子は、以下をどうぞ。
Students, administrators, professors & staff still are signing a banner reading "Protect Trans Students!" outside Mitchell Hall. @udreview pic.twitter.com/vwKNrTMGoS
— Meghan Jusczak (@meghanjus) 2016年10月26日
Student activists have put up fliers all over campus to stand in solidarity with trans students following Monday's Milo Yiannopoulos event. pic.twitter.com/Hgp5O9IphM
— The Review (@udreview) 2016年10月26日
Students stand in solidarity with the university’s transgender community https://t.co/afXT8Y3H7S pic.twitter.com/5g0jcCuoGf
— The Review (@udreview) 2016年10月27日
同じくThe Reviewによれば、ヤノポロスの「危険なオカマツアー」は、ニューヨーク大学やメリーランド大学では「安全上の懸念」を理由として中止されているのだそうです。となるとなおさら、なぜデラウェア大学では中止しなかったのかという疑問が残ります。百万歩ぐらい譲ってイベントは開催するとしても、せめて大学当局としての意見なり見解なりを明解に打ち出すべきだったのでは。単に大学の設備を使ってヘイトスピーチをさせるだけさせて、その後知らん顔では、自ら進んでトランスの学生たちを危険に晒しているも同然でしょうに。
なお、沈黙している大学をよそに、デラウェア大学の卒業生たちはヤノポロスの演説への抗議として「チケットをネットで大量予約し、当日空席にする」という作戦を取っていたとのこと。これで会場の約半分が空のまま終わったそうです。そのうち約50席を予約したという卒業生、スティーヴン・フォックス(Steven Fox)さんは以下のように話しています。
「これが言論の自由に関する話であり、たくさんの人が言論の自由なんだから別にいいじゃないかと言っていたのは知っています」とフォックスは語った。「わたしはそれは一種の責任逃れだと思います。単に誰かがありのままの自分でいるからという理由で、その人を化け物だのバカだのと呼ぶのは正しいことですか? 違いますよ」
「彼がそのように発言する権利は尊重します」とフォックスは言った。「わたしは決して、彼に対する逮捕や、それに類することを求めたりはしません。しかしわたしたちには、団結して、この社会にはそんなことが存在する余地はないと認識する必要があると思います」
“I know a lot of this was talking about free speech, and a lot of people were saying that it’s cool because it’s free speech,” Fox said. “And I think that’s kind of a cop out. Is it right to call people freaks or idiots, just for being who they are? No.”
“I respect his right to say it,” Fox said. “I would never call for him to be arrested or anything like that, but I think we need to come together and recognize that that has no place in our society.”
大学のエライ人より、学生や卒業生の方がよっぽどしっかりしてるわ。あたしはこのフォックス氏の考え方を支持します。