カートゥーンネットワークのアニメーション番組『アドベンチャー・タイム』に登場したラブソングの作者が、あれはゲイのための歌だと発言。それに対し、何が何でもヘテロの歌だということにしたい人たちが一生懸命食い下がっていたようです。
詳細は以下。
'Adventure Time' Writer Confirms Love Song Is Gay, Heteros Are Big Mad | PRIDE.com
『アドベンチャー・タイム』は2010年に米国でシーズン1が始まり、2017年現在第9シーズンまで製作されているシュールなファンタジーアニメ。日本でも2012年から放送されています。
2017年12月10日、カートゥーンネットワークは、同番組のヴァンパイア・クイーン、マーセリンが「Slow Dance With You」というラブソングを歌う場面を公開しました。
マーセリンは以前プリンセス・バブルガムというお姫様とデートしていたことがあるキャラなので、ファンからはさっそくこんな反応が。
the goth jesus marceline making 2018 gay before it even started with a song for princess bubblegum. the national lesbian anthem pic.twitter.com/8QgbU18oYV
— saddy wanna slow dance with lesbian jesus (@queermeras) December 9, 2017
訳:「すごい、マーセリンはまだ年も明けていないうちから、2018年をゲイな年にしたよ。プリンセス・バブルガムに捧げる歌で。レズビアンの国歌だ」。
これに対し、この歌を作った同性愛者のミュージシャン、Babeo Bagginsさんがこんなリプライをつけました。
I wrote slow dance about this girl who didn’t like me cause she had a boyfriend lol 💔 https://t.co/Fd0qY780RC
— 𝔅.𝔅 (@BabeoBaggins) December 10, 2017
訳:「『スロー・ダンス』は、ある女の子のことを書いたの。その子には彼氏がいたから、わたしのことを好きになってくれなかったんだよね(笑)」。
同じ曲を歌うBagginsさん本人の映像はこちら。
というわけで、これはやはりレズビアンの歌だったんですが、これでおさまらなかったのが一部のヘテロ視聴者。なんとしても自分たちこそ(または、自分たちも)この歌の対象だということにしたくて、こんな風に食い下がっていたようです。
a short story about heterosexuals interacting with every single instance of gay art pic.twitter.com/pkO9lHCUmB
— Anthony Oliveira (@meakoopa) December 19, 2017
以下、画像の会話を一部訳:
darkdestroyer15「確証がない。これは100パーセント異性愛者の歌」
beneobaggins(訳者注:作曲者のBagginsさんです)「その歌を書いたのはわたしで、わたしはめっちゃゲイなんだけど」
doodlepede「まあ落ち着け これはみんなのための歌 なぜならみんなこういう経験がある 自分以外と付き合っていたり、自分以外の人を愛している人を好きになるってことが」
beneobaggins「違う……
わたしがあの歌を書いたんだよ……あれはゲイのための歌だよ」
既視感あるわ、この光景。ここでゴネてる人たちって、映画『キャロル』を見れば「キャロルは『イケメン』」だの「ケイト・ブランシェットの『彼氏感』」だのと騒いであのレズビアンカップルにヘテロイメージを押しかぶせ、『ムーンライト』に感動すれば「主人公は一度もゲイと名乗ってないからヘテロ。これは自分たちと同じヘテロの物語!」と言い出す人たちと同類でしょ。ヘテロがヘテロのために作ったヘテロなラブソングやラブストーリーは掃いて捨てるほどあるのに、ちょっと出来のいい同性同士の歌や物語があると「これも自分たちのもの」とド厚かましく横取りしにくるの、やめてほしいわ。
もちろん一度世に公表されたものをどう解釈するかは受け手の自由だし、ゲイの側だってストレートな表現の中にクィアなサブテキストを見出して楽しむことはあります。しかし、同性愛者のミュージシャンが同性への想いを込めて書いた歌を「100パーセント」異性愛者のものだと言い出すのはただの泥棒だし、「みんな」の美名のもとに自分たちを割り込ませようとするのはもっと悪質だと思います。それって「黒人の命も大切(“Black Lives Matter”)」運動に対して「みんなの命が大切だろ(“All Lives Matter”)!」と文句をつける白人と同じぐらい有害ですよ。意味がわからない人は、以下の3コマ漫画をどうぞ。
Next time someone tells you "all lives matter," show them this cartoon https://t.co/Vm1fA2I0TZ pic.twitter.com/b2E8GrG58s
— Vox (@voxdotcom) December 28, 2015
PRIDE.comでも指摘されていましたが、GLAADの調査によれば、米国のテレビ番組の2017-2018年のシーズンに登場したLGBTQのキャラは全キャラのわずか6.4パーセントしかいなかった*1そうです。だからもう、ニーズの切実さが違うの。既に圧倒的な割合の表現を占有している異性愛者が、その貴重な6.4パーセントまでヘテロ色に染めようとするのは、燃えてる家にかけるはずだった水を燃えてもない自分の家にかける行為と同じだよ。
ちなみにマーセリンのこの歌が出てくるエピソードは、どうやらシーズン9第7回(Ep21)の「Marcy & Hanson」(米国では2017年12月17日放送)であるようです。日本では現在シーズン5を放送しているところなので、この回が見られるのは当分先になりそう。でもBabeo Bugginsさんの曲はSpotify(https://open.spotify.com/artist/63gbws6nuYUlQpwWtTlPqD)でたくさん聴けるので、それらを聴きながら楽しみに待とうと思います。