石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

スペインのネット通販会社、広告で同性カップル(とそのファミリー)をフィーチャー

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スペインのオンライン通販会社、Albacaliが、広告に同性カップルとその子供を登場させました。これ、スペインではまだ珍しいことなんだそうです。

詳細は以下。

www.universogay.com

まずその広告をいくつか見てみましょう。

Universo Gayによると、スペインの企業はジェンダーの多様性や多文化共生などに関するプログラムを持っているところが多い一方、LGBTの多様性についてはほとんど何もされていないのだそうです。しかしながら、Albacaliの責任者フアン・ホセ・カシノ(Juan José Casino)氏は、同社で扱っている2万点以上の商品はあらゆる家庭と家族向けのものであって、広告にそれらの家の一部しか(つまり、異性愛者の家庭しか)出さないことには意義を見出せないと感じているとのこと。

また同じくUniverso Gayによると、ゲイ・マーケットの専門家で、コンサルティング会社GRUPO EGFの取締役であるジョキン・エガーニャ(Jokin Egaña)氏は、異性愛者の方だけを向いているビジネスについて以下のように述べているそうです。

「企業が自社の顧客は全部異性愛者だと推定した場合、機会の10パーセントを逃すことになるでしょう。これはどんなビジネスの計画やマーケティング戦略にもネガティブな影響をもたらす、深刻な失策です」

“si una empresa asume que todos sus clientes son heterosexuales se estará equivocando en el 10% de las ocasiones, grave error que interferirá negativamente en cualquier plan de negocio o estrategia de marketing”.

このニュースを読んでいて思い出したのが、レズビアンのカップルを母に持ち、アイオワ州の同性パートナーシップについて超有名な演説をしたザック・ウォルス氏が自著*1で書いていた以下のフレーズです。

「ぼくの母たちは『ゲイな』家に住んでいるわけでも、『ゲイな』車に乗っているわけでも、『ゲイな』犬を飼っているわけでもない。少なくとも今のところはそうだ」

My moms don't live in a gay house, drive gay cars, a gay dog—as far as we can tell.

そう、別にゲイだからって何かノンケと違う特殊なゲイ向け商品に囲まれて生活してるわけじゃないんですよあたしたち。ノンケ同様スコッチブライトのスポンジで鍋を洗ったり、ニベアで保湿したり、コルゲートで歯磨きしたり、ジョンソンベビーシャンプーで赤ちゃんの髪を洗ったりしてるんです(あ、今ここで列挙したのはAlbacaliの特売商品コーナーから適当に選んだ商品です、ちなみに)。

だから、何かコテコテなレインボーカラーのグッズを作って「LGBT向け*2」と言い出すでもなく、アパルトヘイトみたいに他の売り場と分けた「LGBTコーナー*3」を作るでもなしに、「自社でもともと売ってる商品の広告からマイノリティを締め出さない」という方針を選んだAlbacaliのやり方は的確だと思います。今後生き残るのは、こういう会社なのでは。

*1:Wahls, Z.(2012). My Two Moms: Lessons of Love, Strength, and What Makes a Family [Kindle version]. No. 115 / 3451. Retrieved from Amazon.com

*2:「レインボー=LGBT向け」みたいな雑な売り方をされると、「『LGBT』は光につられる蛾のように自動的にレインボーカラーに集まってきて金を落とす特殊生物だとでも思われてんのかしら」と思うわ、少なくともあたしは。レインボーカラーは「LGBT(+)ピープルが好む色」ではなく「プライドやLGBT(+)コミュニティへの支持を表明するための色」であって、ストレート・アライも含めて誰が身に着けたっていいはず。

*3:こういう言い回しだと、特にこれまで着る服に困ってなかった性的少数者にまで「おまえらの居場所はこっち。一般の婦人服売り場や紳士服売り場には、おまえらが買うものなんかない」と言い放ってるも同然だと思います。『クィア・アイ』でも見て、もうちょっと勉強してほしいわ。