Netflixのドキュメンタリー『タコスのすべて』シーズン1に登場したサード・ジェンダーのタコス屋さん、「レディー・タコス・デ・カナスタ」が、同番組シーズン2のプロモーションで巨大看板を飾りました。
詳細は以下。
『タコスのすべて』は、その名の通り、メキシコの伝統料理タコスの歴史や魅力を紹介するグルメ番組です。シーズン1第3話に出てくる「レディー・タコス・デ・カナスタ」さんことマルベン(Marven)さんは、オアハカ州のストリートフード「タコス・デ・カナスタ」の調理・販売業者。
番組内で説明されていますが、髪を長いおさげに編んで化粧をし、ドレス姿でタコスを売り歩いているマルベンさんは、同州フチタンで伝統的に「ムシェ(Muxe)」と呼ばれる第3のジェンダーなのだそうです。「レディー・タコス・デ・カナスタ」という通称は、この番組以前に、化粧をしてプライド・パレードでタコスを売っていたところの姿がSNSで有名になってつけられたもの。マルベンさんがタコスのみならずムシェの伝統や文化についても語った『タコスのすべて』S1E3は、「美食界のアカデミー賞」と言われるジェイムズ・ビアード財団賞の、2020年メディア賞を受賞しています。
で、そのマルベンさんの写真が、今年9月14日から配信予定の『タコスのすべて』シーズン2のプロモーションでこんなビルボードになったんです。
#TodoEmpiezaConUnahistoria pic.twitter.com/Zh8EMZfa4v
— Ladytacosdecanasta (@ladytacosdecana) September 11, 2020
しかも1か所だけじゃないみたい。
Aquí en Monterrey pic.twitter.com/siY6ptcnB4
— Alejandro Cal y Mayor (@AlejandroCalym1) September 11, 2020
とは言え、ここに至るまですべてが順風満帆だったわけではありません。メキシコシティではこの8月に警察の暴力で売り物を地面にぶちまけられ、おまけに自転車を盗まれているし、ネットでもマルベンさんのタコスを買ってすらいない(つまり、品質やサービスを知らない)人から値段に文句をつけられたり、出身地やムシェであるかどうかについてデマを流されたりといったトラブルがあったのだそうです。でも、まずメキシコシティでは道行く人たちがマルベンさんを守ろうと奮闘しているし、本人も訴えを起こして販売許可を確保し、自転車も取り戻したとのこと。ネットでも、大多数の人がマルベンさんを擁護しています。とりあえずこの看板がきっかけで『タコスのすべて』に興味を持った人が、シーズン1から通して見てくれるといいなあ。何よりもまずグルメ番組として猛烈に面白くて(見ていると確実にお腹が減ります)、なのに全然それだけでは終わらないユニークなシリーズだから。
『タコスのすべて』シーズン2の予告編はこちらです。