黒人少年が主人公のクィアな短編アニメ『Pritty(原題)』が、クラウドファンディングで資金を募っています。制作陣は宮崎アニメにインスパイアされており、"Bring Hayao Miyazaki To The Hood "(直訳すると『宮崎駿をフッドに』)をモットーに同作品に取り組んでいるとのこと。
詳細は以下。
『Pritty』はディープサウスに住む黒人の男の子JAYの成長物語。がある夏の日、近所に住む褐色の肌の少年JUSTINと知り合ったことから始まる成長物語。作品の絵柄と、おおまかな内容説明はこちら。
以下の動画で、『Pritty』の冒頭部分をちょっと見ることができます。動画の前半には、監督/脚本のテレンス・デイ(Terrance Daye)さんと、エグゼクティブ・プロデューサーのキース・F・ミラーJr.(Keith F. Miller, Jr.)さんの対談が入っていて、『もののけ姫』など宮崎アニメへの言及も出てきます。
この動画でデイさんとミラーさんが話しているのとだいたい同じことがKickstarterのページでも説明されていて、ざっくり訳すとこんな感じです。
『Pritty』で表現したいと思った緑豊かな風景やナチュラリズムに関して、ぼくらは日本のアニメーション監督の宮崎駿にインスパイアされています。彼の作品は、ぼくらのインスピレーションの最大の源となりました。けれど、あんなに美しい宮崎作品の世界の中に、ぼくらは自分たちの姿を一度も見たことがないんです。『宮崎駿をフッド(Hood)に』というのが、ぼくたちの新しい標語になりました。あの繊細さとニュアンスでぼくらの街を、コミュニティを、場所を描くことは、作品の中心を占めるに値すると思います。
We turned to Japanese animation director, Hayao Miyazaki, to inspire the lush landscapes and naturalism that we wanted to exude through Pritty. His work became one of our largest sources of inspiration. But for all its beauty, we never saw ourselves represented in his worlds. Bring Hayao Miyazaki To The Hood became our new motto. Our hoods, our communities, our spaces with their subtleties and nuances are worthy of occupying the center. This animation is a reminder of that.
だからこういう淡い色彩の、ニュアンスに富んだカラー設計になってるんですね。
PRITTY - On a scorching summer day at a community pool, a black teen learns to step out of his comfort zone, and with the help of a charming neighborhood boy, overcomes his fear of the deep end
— Jenn Ravenna Tran (@JennRavenna) March 2, 2021
This queer, Miyzaki inspired film looks absolutely gorgeous. https://t.co/wTk7YIu6bU https://t.co/c1lE1WZedk pic.twitter.com/h7lrx22EGW
“Bring Hayao Miyazaki To The Hood” became our motto for @PrittynotPretty, bridging the beauty, joy, and swagger that is Black and Brown culture. pic.twitter.com/a3qtRrKDKu
— Pritty (@PrittynotPretty) March 5, 2021
なお「フッド」というのは単純に説明すると「都会の人口過密なエリアにあって、住民の大部分をアフリカ系アメリカ人が占めている町」のこと。ほら、映画『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス(Barry Jenkins)監督が、同映画について「フッドをアートハウスに持って行くのではなく、フッドにアートハウスを持ってくる」という説明をしてたでしょう、あの「フッド」です。そして『ムーンライト』で思い出したんだけど、『Pritty』のデイ監督は「黒人少年のキャラが自分たちの人間性や傷つきやすさを発見し、それらによって癒されることを学ぶところを描いた物語が少なすぎる」ということから、「黒人男性のもっとソフトで親密な側面を視覚化したらどうなるか」をスクリーンに映し出したいと決意しているのだそうで、ひょっとしたらこの作品は『ムーンライト』の系譜というか返歌にあたる位置づけになるのかもしれないと思いました。『ムーンライト』自体も、ブラック・ボーイのクィアネスを描いた映画が少なすぎるところに彗星のように登場した作品だったけれど、『Pritty』はまたちょっと違う角度で主人公のピュアさを表現していくのかも。
クラウドファンディングでの支援は、1ドルから可能です。詳細は以下をどうぞ。
Pritty: The Animation by Pritty: The Animation — Kickstarter