米国の疾病対策予防センター(CDC)が、成人異性愛者でPrEP(曝露前予防を目的とした抗HIV内服薬)のことを聞いたことがある人は32.3%のみで、でPrEPを服用している人は1%以下しかいないと発表しているというニュース。ちなみに2020年のデータによれば、HIVの新規感染者の約22%がヘテロセクシュアルなんだそうです。San Francisco AIDS Foundationは、問題は医療従事者がPrEPを「ゲイの薬」とみなしているため、異性愛者に勧めないことにあるのではないかと言っているとのこと。
これってそもそも、80~90年代のHIV/AIDS禍のとき、「AIDSはゲイの病気」と決めつけて、ゲイを攻撃・排除していれば自分たちは無事でいられると思いこんじゃった異性愛者が山ほどいたことの悪影響なんじゃないですかね。この手の「悪いことはコミュニティの外にいる『あいつら』がもたらすのであって、『あいつら』さえやっつければ清浄たる『我々』は大丈夫」という呪術的思考は別に珍しいものではなくて、たとえば新型コロナ禍でのアジア系に対するヘイトクライムなんてその典型ですよね。
上記動画のようなヘイトクライムが報道され出したとき、多くの人が「本当にアジア系が新型コロナの感染源だと思うのなら、どうしてわざわざアジア系に近寄って行って接触するんだ」と突っ込んだと思うんですけど、この手の加害者は恐怖に対するコーピングスキルとして科学ではなく呪術を選んでしまった人たちなので、そのような理性的な判断は働かないのだと思います。しかし、せっかくHIV/AIDSが「死なない病気」になったこの21世紀に、科学の徒であるはずの医療従事者が「ゲイの病気」というヘテロ慰撫用の呪文にいまだに縛られているのなら、それはめちゃくちゃ問題でしょう。CDCの調査によれば異性愛者もPrEPについて知れば服用に興味を持つそうなので、いいかげんにお金と人手をつぎこんで一大キャンペーンを張るべきなのでは。しかし皮肉だよね、死の恐怖から逃れるために「ゲイの病気」と決めつけてゲイバッシングに精を出してた異性愛者たちが、その決めつけのせいで今度は自分たちが感染リスクを背負うだなんてね。