石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『ヤングガン・カルナバル(1)』(佐藤夕子[画]/深見真[原作]、ソフトバンククリエイティブ)感想

ヤングガン・カルナバル1 (Flex Comix)

ヤングガン・カルナバル1 (Flex Comix)

原作ファンもそうでない方も、ぜひ。

銃とアクションとレズビアンが大活躍な小説『ヤングガン・カルナバル』のコミック版。原作の世界観はそのままに、オリジナルシナリオで塵八と弓華が大暴れです。アクションの迫力もキャラたちの内面描写もいいし、テンポの良い話運びも魅力的。原作ファンもそうでない方も楽しめるつくりになっていると思います。

アクションの迫力について

何がいいって、痛いことはとことん痛そうに、残酷なことはとことん残酷に描いていくという佐藤夕子さんの筆さばき。当たり前ですが人は殴られれば痛いし、テッポーで撃たれれば人体の組織が破壊されるんですよね。そこをごまかすことなく本当に痛そうに描いていく絵柄が、とても好きです。よく暴力描写はいかんといいますが、いかんのは暴力だけ描いてその結果を描かないことでしょう。血も流れない相手をバッタバッタと片づけて終わりではなく、「暴力をふるうと相手の体はこうなる。さて、おまえはどうする?」という問いを喉元につきつけてみせるのが「物語」の役目のひとつだと思うんですよあたしは。

ちなみにこの作品、そうやって痛みのリアリズムを追及しつつ、アクション面ではケレン味のある大技をこれでもかとばかりに出してくるところも最高です。弓華がヘッドシザー・パイルドライバーを決めてたり、塵八は塵八で飛びつき腕ひしぎ十字固めをぶちかましていたりと、漫画ならではの派手な動きの数々は見ていて飽きません。まとめると、この作品のバイオレンスシーンは「派手だけれども有効かつ痛そう」という迫力に満ちたものであって、そこがとてもいいんですよ。

キャラたちの内面描写について

シナリオが原作と同じ深見真さんだということもあってか、キャラたちの心理描写に違和感はゼロ。塵八の内気さも、弓華のオンナノコスキーなところも、いかにもという感じでよかったです。ちなみに弓華については最初から人妻とつきあっていて、身体の関係もあるという飛ばしっぷりですが、伶との出会いでコロリと恋に落ちるところは必見。早くもカノコが絡んで、2巻への大きな引きになっているところが見ものです。

テンポの良い話運びについて

原作からはしょるところははしょり、ふくらませるところはふくらませるというメリハリがきいていて、ストーリーの展開がとてもスムーズだと思います。1巻だけでメインキャラをこれだけ登場させているのに、ぜんぜん詰め込み感がないところはさすが。これなら、初めてヤングガンの世界に触れられる方も、お話に入っていきやすいんではないでしょうか。

ただ、「はしょる」部分に関して言うと、小説版で弓華の描写に使われているさまざまなレズビアン的ガジェットが削られてしまっているところだけはちょっぴり残念でした。携帯の着メロが東京少年の『性差別』だとか、プレイしてるゲームがおそらく『サモンナイト・クラフトソード物語』だとか、そうした細かい設定は、今のところ漫画版では全部カットです。こういうきめ細やかな部分こそ大好きだったんで、個人的にはちょっとだけ物足りない感じ。とは言え、そこまで全部原作通りにしたらとてもこのページ数ではおさまらないでしょうし、演出上の都合もあるでしょうから、「これはこれ、それはそれ」とじゅうぶん納得できる範疇のことなんですけどね。

まとめ

まず迫力あるバイオレンス・アクションものとして面白いし、小説版の世界観やキャラ造形がしっかりと生きているところもよかったです。弓華の恋の行方も見逃せません。原作との違いも納得できる範囲ですし、銃と格闘技と同性愛少女に心惹かれる方なら買いですよこれは。