- 作者: 佐藤夕子
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2011/03/12
- メディア: コミック
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文句なしの最終巻
小説『ヤングガン・カルナバル』のコミック版第5巻。風樹と山神を倒し、ダニエラを守りきったところで完結です。相変わらずの痛みと残酷さ、そして原作と共通するメッセージがよかった。百合方面でも弓華の活躍が光ってました。
やっぱり痛くてエグいです
塵八の受ける拷問やダニエラを待ち受けるアレなど、「漫画版だとどうなるんだろう」と思ってましたが、本当に全部原作通りでした。おおおおお。特にダニエラの方は、先の展開を知っていても心臓がでんぐり返るおぞましさ。だからこそ、その後の虚先生のカッコ良さや塵八の怒りがより鮮やかになるわけで、「よくぞここまでやってくれました」とひとり拍手しました。この残酷さはお話のメインテーマにもつながってくる重要な要素なので、そこをぼかさなかったのはスゴイと思います。
「……どうして悪いヤツっていなくならないのかな?」
原作と共通する、塵八の、
「……どうして悪いヤツっていなくならないのかな?」
という今さらな質問(p. 62)から始まる弓華との会話シーンがたいへんによかったです。このシリーズの最大の魅力は、スカッとするアクションものでありつつ、「正義が悪を倒しました、めでたしめでたし」というお話では絶対ないところ。もっとやるせなく痛々しいものをたたえた小説なんです。漫画の方でもそのメッセージ性が失われていないのは、嬉しいかぎり。
今回の弓華
弓華は戦闘ではいつもの天才ぶりを遺憾なく発揮。4巻であれだけ苦戦した亜里沙を相手に、
あんたとは殺し合いじゃなくキスでもできたら幸せなんだけど
と軽口を叩いちゃうところ(p. 84)がステキ。恋愛方面は区切りの都合でカノコエンドなのですが、その場面の弓華の表情が、彼女の今後の苦悩をもさりげなく匂わせているところが心憎いです。閉じた結末ではなく、開かれた結末なんですよね。
まとめ
5巻で終わりということで「どうやってまとめるんだろう」と思ってましたが、この終わり方なら満足です。改めて原作と見比べてみると、エピソードの順番を入れ替えてツカミを作ったり、バトルシーンを短くして、その分ビジュアル的に派手な動きが入れてあったりと、実はずいぶん脚色されていることがよくわかります。限られたページ数の中、ストーリーの全体性を損なわずに漫画化してみせるという離れ技は、ここからくるのですね。