石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『青い花(1)』(志村貴子、大田出版)感想

青い花 1巻 (F×COMICS)

青い花 1巻 (F×COMICS)

今時の女の子同士の恋愛風景をていねいにすくいあげた良作。

今時の女の子同士の恋愛風景をていねいにすくいあげた良作。可愛らしい絵柄と絶妙の間の取り方と、ふわりとしていながらもリアルな空気が素晴らしいです。2巻がとても楽しみです。

舞台に女子校も登場するのに古臭い「禁断の恋」路線に陥らず、「別に女の人を好きでもいんじゃないでしょうか? ……あたしの頭がシンプルすぎるのでしょうか?」(p144)ってな反応になってるところが嬉しいなあ。ノンケ帝国の牙城もずいぶん揺らいできている今、これぐらいの雰囲気の方が「今時」な気がします。

女の子を好きなキャラたちにちゃんと過去の恋愛経験があって、相手は女性だったり男性だったりとさまざまなのもいいですね。「女の子は皆、当然のように女の子ばっかり好きになる」っていう世界観だと『マリみて』とか『あやかし忍伝 くの一番』みたいな一種の異世界ものになってしまって(※『マリみて』には例外的に男性を好きになった人が1人いることはいますけど)、それだとこのストーリーには合わなかったと思います。

あと、キャラによっては、好きな人とかつて女性同士の性的な関係があったことがそれとなく示されていて、なんだかほっとしました。別に全部のキャラをガチな人にする必要はないんだけど、こういう描写がちゃんとあると、「友情の延長」だの「擬似恋愛」だのというずるい描き方で何でもかんでもごまかされることがなさそうで嬉しいです。

最後にもうひとつ。この話を「レズビアンのふみとノンケのあーちゃんの『友情』物語」ととらえた人は、最後の数ページを本当にちゃんと読んだの? いやあたしが今後の展開を知らないだけで、2巻に収録される部分で結局何事もなく話が収束するのかも知れんけどさ。とりあえずあたしはドキドキしながら続巻を待つことにします。